ナチュラリスト講座 奥入瀬フィールドミュージアム・コラム

ナチュラリスト講座

奥入瀬は,勾配ゆるやかにして純度の高い自然を満喫できる,まさに天然の野外博物館。
ここでは、登る・走る・ウォーキングするといった,一般的なアウトドア・アクティビティとは一線を画した 「あるく・たたずむ・うずくまる」が基本スタイル。
立ちどまるからこそ見えてくる,森羅万象のかずかず。
足もとのコケから頭上の鳥たちまで,奥入瀬の「作品」をゆっくり・じっくり・たっぷりと楽しみましょう。
自然のことについてはあんまり詳しくないけれど,できればもっと深く楽しむためのアドバイスがほしい。
ただ見流すだけではない,ちょっとした「自然の見方」を身につけるためのヒントが,もう少しほしい。そんなあなたのためのコラムです。
奥入瀬の自然の「しくみ」と「なりたち」を,いろいろなエピソードを通し,わかりやすく紹介していきます。

ナチュラリスト講座 講座一覧

2025・01・31

#94 よくわからない奥入瀬のシノリガモのくらし

奥入瀬にシノリガモの繁殖個体が姿を見せるようになったのは、西暦2000年以降のことだそうです。それまでは、春に北上していく個体が通過するだけの出現であったといいます。なんとも劇的な変化ですが、その詳しい理由はわかっていません。シノリガモ自体が増えてきたことを示すものなのでしょうか。追跡調査をしているわけではありませんが、ここ数年は毎年無事にヒナを育てているようです。
2024・12・30

#93 森林美学ってなんだろう(その二)

御神木や山ノ神、境界や呪術など、これらはすべてアニミズムです。一本の巨樹を見て、上のあらゆる被造物のうち、それは最も壮大で、最も美しいものだと称賛したのが『森林風景論』を書いたギルピンでした。景観としての自然美だったわけです。そこにフンボルト的な思考が混じってくるならば「巨木というものが多様性の原理の象徴であるがゆえに美しく荘厳な存在なのだ」という解釈になるでしょう。
2024・11・30

#92 森林美学ってなんだろう(その一)

「景観」もまた森の「資源」である考え方に基づくならば、そこから見出される文化的情緒なども「美的資源」ということになります。「森」という舞台から得られる情報が、より具体的となり、また情報量も多くなることでしょう。森という大きな懐において、すぐそばにある小さなものを観る=具体的な対象をそのつど発見し、認知できるのが、おそらく「森歩き」が上手な人といえるかも知れません。
2024・10・30

#91 笑いヤマセミ事件

ヤマセミはよく鳴く鳥です。その鳴声は概ねどの図鑑にも<キャラッキャラッ>あるいは<ケレッケレッ><ケレケレケレ>という鋭い声で鳴くと記載されています。音声のとらえ方とその言語表記には個人差があるようで、筆者などはどう聴いても<キャラ>とか<ケレ>には聞こえないのですが、案外とこういう感想を持つ人は少なくないのではないかと思います。いずれにせよ〈キョッ〉とか〈ケッ〉などと聞こえる鋭い声で、叫ぶように鳴きます。
2024・09・30

#90 奥入瀬の鳥つれづれ

奥入瀬を代表する鳥は何かと尋ねられることがあります。渓流域を主とし、一年を通してよく目にできる鳥といえばカワガラスとミソサザイ。彼らはまったく別のグループに属する鳥でありながら、同じような生息環境に適応しているため姿形がよく似ています。ただカワガラスは水中を泳ぐことができますが「日本最小の鳥」のひとつとして知られるミソサザイは水の中には入れません。岸辺の岩の間をうろちょろしています。
2024・08・30

#89 渓流のよどみに浮かぶうたかたは(その二)

倒木で流れが滞留していたところに、例の泡のカタマリが引っかかっていました。あの泡が何によるものかもう調べられていますか?と同行の植物学の先生から尋ねられました。多糖類によるものという報告が出ています、とお答えしたところ、思いがけず「水生菌によるものかも知れません」とのご指摘。不勉強にも、水生菌という存在をこの時初めて知りました。
2024・07・31

#88 渓流のよどみに浮かぶうたかたは(その一)

奥入瀬渓流の流れのところどころ、特に岸寄りの小湾部のたまりなどに、黄白色~薄茶色の泡のかたまりが浮遊もしくは滞留しているのをしばしば目にします。界面活性剤由来の泡のような印象があり、ヤヤ気味が悪く、景観的にも決してよろしくありません。いかにも薄汚れた感じがします。観光客の目にも入ってきますので、奥入瀬のイメージを大きく損ねています。
2024・06・05

#87 初夏の風にゆれる湿原の白き綿毛

ワタスゲは「綿菅」と書きます。初夏の湿原を代表する存在として世間一般にも広く知られていますから「ワタスゲの花が白く揺れている」と紹介されることも少なくありません。でも、おそらくはちょっと植物に関心のある人ならばご存知のことでしょう。白い綿帽子は、実は「花」ではなく、花の時期を終えたワタスゲの「実」から伸びてきた綿毛なのです。
2024・05・05

#86 たまごのゆりかご

春の奥入瀬の水辺はカエルたちの産卵ピーク。透明なゼラチン質の卵塊は、陽の光があたるときらきらと輝きます。カエルの卵なんて、ぶよぶよして、目玉模様で気持ワルイ。そんなふうに顔をしかめる方もいらっしゃいますけれど、なかなかきれいなものに見えることもあれば、アップで観賞すると少々グロテスクな現代アートっぽくなるものもあります。見つけたらちょっと観賞してみましょう。

ナチュラリスト講座

奥入瀬の自然の「しくみ」と「なりたち」を,さまざまなエピソードで解説する『ナチュラリスト講座』

記事一覧

エコツーリズム講座

奥入瀬を「天然の野外博物館」と見る,新しい観光スタイルについて考える『エコツーリズム講座』

記事一覧

リスクマネジメント講座

奥入瀬散策において想定される,さまざまな危険についての対処法を学ぶ『リスクマネジメント講座』

記事一覧

New Columns過去のコラム