- 3月2日 ブナの霧氷群—標高1240メートルの雛岳(ひなだけ)は北八甲田山塊の東宝に位置する山で、稜線近くまでブナの樹林帯が延びています。雪崩と地吹雪のきついところに樹は生えていないことがわかります。上部の方は吹きつけられる雪氷を身にまとまったブナの霧氷が居並んでいます。
- 東八甲田
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-03-02 10:55
- 3月1日 馬門岩の氷柱(ひょうちゅう)—世にあまたある氷瀑に比較すれば、正直なところ、まあどうということのない、ただの大きなツララに過ぎないのですが、奥入瀬では国道沿いで観賞できる最も大きな氷柱で、それが生まれる場所が馬門岩です。3月の声を聞き、だいぶ縮小してきました。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-03-01 12:57
- 2月28日 あじわいのある色—いきつもどりつをくりかえしながら、水のおもてが少しづつひらきはじめています。厳寒と呼ばれる季節も、ようやく終わりのきざしを見せはじめているようす。青黒い水、粉を吹いたような細かな氷の質感が、なんともいえない、あじわいある色を呈していました。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-28 13:09
- 2月27日 エッジあるいはナイフ—渓流で見つけた氷の造形。むろんこちらの心象の投影に過ぎないのですが、この鋭い光には、妙に不穏なものを感じてしまったのでした。「幻視」というものも、度を越えてしまえばよろしくないことですが、なにかに見えてくる、というのは実に面白い体験です。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-27 12:42
- 2月26日 大蛸あるいは怪物的存在—まさにそんなイメージを見る者に抱かせるこの樹形が、純粋な自然の産物であるとは思えないのは、ポラードという樹形のできかたを知っているからで、かつてそうした枝伐りの方法が実際に行われていた八甲田東山麓のブナ群とよく似通っているからでしょう。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-26 13:12
- 2月25日 雪の森の地衣類—まったくもって、この季節のこういう眺めくらい、ブナの幹上に貼り付いて生きている痂状(かじょう)地衣類たちの存在を強く感じさせられる景観もないでしょう。固着地衣類とも呼ばれるように、彼らはほとんど樹皮の模様そのものです。完全に一体化しています。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-25 13:47
- 2月24日 薄氷のオブジェ—沼の解氷は周辺から進むようです。なにか物理的な理由があるのでしょうが、調べたことがありません。中央の氷は、まだまだ後退を潔しとせず、しかしそのド真中には二重の窓が開いていて、すでに例のクモの巣型のキレツが生じています。いやはや、なんという芸術。
- 蔦の森(月沼)
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-24 13:10
- 2月23日 暖気で開いた沼の水面—水底のブナの落葉たちが見えています。水の窓を囲む氷には、クモの巣型のキレツが延びて、寒のゆるみを表出しつつあります。しかし季節はまだれっきとした冬なので、そうそう簡単にゆるんでもらっても困るとばかりにみぞれのような雪が降って来るのでした。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-23 13:13
- 2月22日 たおやかな起伏—すっかり雪に埋もれた蔦の森の遊歩道。地形に即した起伏、歩道の凹面がなす起伏、どちらも実にたおやかです。長く伸びた樹影が織りなすマーブル模様が、さらなる妙味を加えています。さて、これからここをスノーシューでざくざくとけがしていかねばなりません。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-22 13:43
- 2月21日 瓦茸—出始めの頃こそは、まだうるわしい感じもするのですが、冬を迎える頃にはがさがさに。実物を目にしても、それほど心躍る対象というわけでもありませんが、朽木の上にみっしりと生えそろった姿を写真に撮ってみると、またなんともいえない魅力が出てくるのだから不思議です。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-21 13:24
- 2月20日 雪の森の影絵Ⅱ―晴天の日がしばらく続いて、林床の雪もざらついてきました。バージンスノーのような聖性さには欠けるものの、それでもそこへ午後の陽ざしが差し込み、居並ぶ樹木たちに長い影を与えているのを目にすると、やはりそこへ足を踏み入れることをためらってしまいます。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-20 14:00
- 2月19日 雹の宝石―いきなりバラバラと音を立てて降ってきた雹(ひょう)。白くて硬い雪のつぶてが、暖気に濡れた落葉の林床にふりまかれ、みるみる白い粒だらけとなりました。多くはそのまま融けて消滅していきましたが、ただどうしてか、うちのひと粒が瞬時に輝く氷塊となっていました。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-19 11:52
- 2月18日 栗の毬(いが)―自生する栗の木は、奥入瀬では下流域に限られ、しかもわずかしかないのですが、毎秋、ちゃんとイガイガの実を落とします。威嚇的なトゲに保護された、肝心の実生をまだ目にしたことがないのですが、ただ単に気づいていない(目に入っていない)だけなのでしょう。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-18 09:14
- 2月17日 惣辺ブナ林の雪景色—新緑、黄葉もよいのですが、雪もまたよしの白い森の眺め。植物の生命力にいささか息苦しくなる夏は、ちと苦手。あっさりした雪景色には、なんだかほっとさせられるような。四季を通じ微妙だにしない樹幹の地衣類も、冬だけはひときわ目立つような気がします。
- 奥入瀬下流域(惣辺)
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-17 10:43
- 2月16日 ノウサギのおとしもの—それほど多くないにせよ、奥入瀬にもノウサギが棲んでいます。この、まあるい糞塊も、れっきとした生存の証拠なのです。ほとんど植物繊維で固められていて、丸薬あるいはひと昔前のお菓子のような印象が強く、排泄物というイメージはあまりありません。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-16 12:59
- 2月15日 神の手技—まるで硝子細工のような「作品」を目にするたび、こうしたものをさりげなく、しかもそこかしこに創出する自然というものには、やはり「神の手」を感じずにはいられません。ですが、観賞者が「神」を感じなければ、そもそも「神」なるものは存在しないのです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-15 14:59
- 2月14日 水鳥の羽―渓畔の水たまりに落ちていた、おそらくは水鳥のものとおぼしき羽毛。「羽」というものが持っている、あの幾何的な整然さとはうってかわり、いかにもやわらかそうな、くしゃくしゃに乱れた「毛」のようすがまた、それはそれで自然のままの美しさを感じさせるのでした。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-14 14:15
- 2月13日 氷の宇宙—やや解けはじめの雪が急激な冷え込みを受けて凍りつき、それが斯様な造形をつくりだしていました。焦点の合っている範囲が狭くて、どうということのない一枚。それでも魅かれるのです。透明な氷の中に閉じ込められている気泡のつぶつぶ、降ってきたひかりのつぶつぶに。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-13 12:43
- 2月12日 何に見えますか—激流の小沢で、飛沫が凍った小さな岩を撮りました。なんとんなくよいなと思ってカメラを向けただけで、現場では特に何も感じず。PCで写真を見ていたら、なんだか新手の動物(UMAですね)が、果敢に滝登りをしようとしている映像のようにも見えてきました。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-12 09:05
- 2月11日 粘る冬芽―トチノキの冬芽に、小さな枯葉が貼り付いていました。雪の林床を吹き飛ばされてきたのであろう落葉が、冬芽の防寒用ネバネバに、鳥モチのようにがっちりキャッチされたというわけです。トチのこの粘液はなかなか強力で、しばしばフユシャク(蛾類)も捕まっています。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-11 13:34
- 2月10日 雪氷の紋様―大袈裟に言うなら神の意匠のような気もします。ひとつとして同じものはなく、またどんどん変化していきます。この造形を目にした時、思わず「スターチャイルド」を思い浮かべてしまいました。SF映画『2001年宇宙の旅』に登場する、光に包まれた胎児のことです。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-10 12:50
- 2月9日 いきおいあまって—冬芽は芽鱗(がりん)と呼ばれる鎧(よろい)のようなカバーによって護られています。このカバーの下に花芽があり、それはふさふさした毛に覆われています。まだ2月というのに、春を待ちきれなくなったのか、カバーとかバーの隙間から毛がはみ出していました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-09 12:06
- 2月8日 羽跡―渓流のほとりの雪上に、カワガラスの羽のあとが付いていました。この痕跡を、はたしてどのように「読む」べきでしょうか。雪の上へ上がってきたのはどちら側から? そこでかくも大きく翼を広げてみせたわけは? そしてどちらに向かって、どのように翔び去ったのでしょうか。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-08 12:08
- 2月7日 凍る細流―夏から秋はほんのわずかな水量で、しかし決して途切れることなく、崖の上方からちょろちょろと流れ続けて岩肌を真っ黒に濡らしていたかぼそい流れが、厳冬期にはなかなか見事な氷の造形と化し、対峙する者を魅了してきます。ちょっとした氷瀑のおもむきすらあります。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-07 11:54
- 2月6日 雪帽子―紫明渓(しめいけい)と呼ばれる下流域の景勝ポイント。川幅ある流れを見通せる場所で、冬は雪の帽子をかぶった岩々を眺めることができます。奥入瀬は14キロもあるので、こういう眺めは至るところで見られるようで、実はそうでもありません。下流域ならではの景観です。
- 奥入瀬下流域(紫明渓)
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-06 11:13
- 2月5日 蝦夷紫陽花の枯れ花―白く脱色した、それでいて葉脈のあとがはっきりと浮き出た、飾り花のドライフラワーにやっぱり目を引かれてしまいました。秋からさんざん目にしてきたものなのに、どういうわけか状況が変わると、つい足を止め、たたずみ、しばし向かいあってしまうのです。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-05 09:17
- 2月4日 軽吹雪の日―視界がまったくきかなくなる本当の吹雪に較べたら、この日は軽吹雪とでもいう感じで、強めの風と軽い降雪。でも昨晩からずっと吹き続けている風は、ブナの幹に徐々に雪を圧着させています。面白いことに、風はだいたい同じ方向から吹き付けていることがわかります。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-04 12:33
- 2月3日 雪上の落葉―秋の初めには黄葉するブナも、その後だんだん茶色味が増していき、やがて茶褐色となって落葉します。褐葉(かつよう)といいます。ブナは葉の質が硬く丈夫なので、落葉後もしばらく原型をとどめたままです。雪上のものは、まるで冷凍庫に保管されているようでした。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-03 13:49
- 2月2日 雪の森の影絵—雪のあとのブナ二次林。足跡を付けるのがためらわれるような眺めでした。まだお昼前というのに、遅い午後といった感じの斜光が差しています。延々と連なる若いブナたちが、白一色の森の底で一斉に見事な影絵を描いていました。ますます足を踏み出せなくなりました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-02 11:33
- 2月1日 薄暮の蔦沼―昼間から厚い雪雲に覆われて、陽の力のなんともよわよわしい日でした。森の中で過ごし、もうそろそろ帰ろうかと沼のほとりに出てみました。午後17時、水墨画のような世界が広がっていました。思いがけず素敵な景観に息を呑み、しばらくその場から動けませんでした。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-02-01 17:00
- 1月31日 馬門岩の氷柱—氷柱と書いて「つらら」と読みますが、この場合は「ひょうちゅう」と読んでほしいと思います。奥入瀬で立派な氷柱を観賞できるのは馬門岩(まかどいわ)で、ライトアップも試みられていますが、午後の斜光を浴びてほんのり色づいた姿の方がだんぜん趣きがあります。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-31 14:40
- 1月30日 鳥の古巣—岩崖のちょっとしたテラスに、苔がこんもりと積まれていることに気づきました。これは夏のあいだ、渓流の上で張りのある歌声を響かせていた美鳥・大瑠璃(オオルリ)の古巣です。いかにも目立ちそうなものなのに、どうしてか冬になってから気づくことの方が多いのです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-30 14:10
- 1月29日 リスの足あと—奥入瀬や蔦の森にリスが少ないのは、針葉樹やオニグルミの少なさによるものか、痕跡を見ることはまれ。地上を跳ね歩く際、小さな前足を先に地上に着けます。その後、それを跨(また)ぎ越すようにして後足を前足の前方に着地させるので、こんな足型となるのです。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-29 08:59
- 1月28日 氷は宝石—氷塊の粒はあたかも宝石のよう。それも季節限定の。きらきらした白い輝きに魅入らされてしまうのは、ニンゲンのいかなる性(さが)によるものでしょうか。みずからを「飾る」ということの有利性はともかく、そんな発想がなくとも、ただただ見つめていたい天然の美。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-28 13:56
- 1月27日 苔氷をもとめて—苔氷の存在を知ってからは、苔むした岩に水飛沫がかかって凍った岩にちょくちょく目を向けるようになりました。すると苔以外にも、木の芽を包んでいた芽鱗(がりん)や種子の皮、葉の裂片、小枝など、いろいろなものが氷に封じ込められていることを知りました。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-27 13:54
- 1月26日 淡い苔氷—氷の粒の中に緑が閉じ込められている。初めて見た時には驚いてしまいました。「どうしてなのか」というより「なんと美しいのか」という気持の方が先立って。冬も緑のままの苔が、氷に包まれている。「苔氷」という言葉が、ふと頭に浮かんだ瞬間でした。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-26 13:54
- 1月25日 氷塊のデザイン—ひとかけらひとかけらが集まって、ごつごつした氷塊をつくっていました。そのひとつひとつに現れた、しわ模様や筋模様、渦模様、波模様。透明な氷の中に、白い筋が入るのはなぜでしょうか。水に不純物が混じると白く濁る、という話はきいたことがあるのですが。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-25 13:36
- 1月24日 滝飛沫氷—滝壺がなく、岩盤に叩きつけられることで跳ね上がる、途切れることのない水飛沫。これほどの勢いの水流であっても、ちゃんと氷の垂れ幕がシャンデリアのように成長することの不思議。毎年同じく起こる現象でも、毎年ひとつとして同じかたちのものがないことの不思議。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-24 13:18
- 1月23日 苔むす岩下の氷柱—渓流の岩下にできていた小さな氷柱(つらら)の群れ。苔から滴る水滴が生んだ造形です。冬の苔はたいていは乾燥しています。渓流の飛沫が水分を与えれば、それが氷に化けるのです。つまり氷と流れは一体。ですが、どう見たって別の世界のものにしか見えません。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-23 13:06
- 1月22日 色ちがい—黄色い実が裂開すると現れる赤い仮種皮。蔓梅擬(ツルウメモドキ)の特徴です。色を変えることで採食者の多様化を狙っているのか、白い季節には赤の方が目立つからと計算してのことなのか。鮮やかだった赤も、時の経過と共に萎びていき、硬い種子の面が出ていました。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-22 12:28
- 1月21日 地吹雪—谷の中を強風が吹き抜け、樹上の雪がいっせいに落ち、地上の粉雪がごおと舞い上がると、瞬時にせよ視界が真白になり、えもいわれぬ不安に抱きすくめられることがままあります。不意に吹く強い風というものは、イヤ、なかなかのものでありまして、決してあなどれません。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-21 10:23
- 1月20日 栗の大木―この樹が自生のものなのか、ずっと昔に植えられたものなのか、定かではありません。ただこのあたりに栗はこれ一本限り。傍らの温泉宿の人たちは、きっと昔から大事に見守ってきたのではないでしょうか。絡みついた常緑樹の緑が、この樹の生命力を讃えているようです。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-20 13:12
- 1月19日 沼のおもての水窓—暖気が続き、蔦沼の水面が開いていました。若いブナの群像がくっきりと映り込んでいます。水鏡と呼ばれるのもさもありなん。凝視していると、なんだか不思議な気分に。「あちら側」というものの存在を、どうしても感じずにはいられなくなってくるからでしょう。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-19 12:58
- 1月18日 ブナ一輪—どういうわけかいつまでも枯れた葉を付けたままの多い冬のブナ。でも若木はたいてい裸です。なのにこの木には1枚だけしぶとく枯葉がくっついていました。なんということのない眺めではあるものの、どうしてか妙に心魅かれたのです。「一輪」という言葉が浮かびました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-18 12:52
- 1月17日 ブナの若木―雪に埋もれて、なんだかたいへんそうにも見えるのですが、尖った冬芽を付けたを、果敢に雪上へ突き出しているそのようすは、まあ、なんとなく、まだまだやっていけるんじゃないかなあ、などとまったく何の根拠もなく、そう思わせてくれたりもするのでありました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-17 12:51
- 1月16日 黒い森—大きなブナは冬の間中、ずっと枝先に枯葉を付けたままでいることが多いのです。なので冬でも黒い森。大雪が降り、いっときは樹氷っぽくなっても、日中ちょいと陽が差したり、風が吹いたりすれば、梢の雪はすぐになくなってしまい、また黒々とした樹冠をさらすのです。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-16 12:33
- 1月15日 凍った川面―はらりと降った雪片が融けたり凍ったりして生じる、いろいろな雪氷のかたち。ざくざくした感じの、この細身の氷の造形はなにかに似ているようで、でもそれがなんなのか、どうしても言葉になりません。きっと「〇〇氷」という名が付いているような気もするのですが。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-15 12:28
- 1月14日 小さな光景―冷え込んだ日が続き、生きものの気配がほとんどなくなってしまったような季節であっても、しばしばハッと思える出逢いが期待できるもの。むしろ生物の存在感が感覚的に薄れていくぶんだけ、自然界の優れた造形に「美」を見いだせる機会が増えるのかも知れません。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-14 12:27
- 1月13日 飛沫氷(しぶきごおり)—十和田湖岸に点在する大岩に、強風による荒々しい波濤があたっては砕け、凍り、さらに飛沫を被って凍り、だんだんと大きく生長していきます。厳冬期ならではの湖畔の造形物です。<自然>こそが優れたアーティストなのだと、つくづく実感させられます。
- 十和田湖畔子ノ口
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-13 12:12
- 1月12日 雪上の足あと—真新しい痕跡がくっきりと残っていました。一見この形状は(大きさはともかく)ノウサギのものに似ているのですが、ずぼりとあいた穴の中には二つの蹄(ひづめ)のあとが。偶蹄目という名の通りカモシカのものでした。走っている時にはこんなかたちになるのですね。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-12 12:12
- 1月11日 ツルアジサイのドライフラワーーこれが落ちているのは、冬の森ではおなじみの光景。花季が終わってからも枯花としてしばらく樹上に残り、森の底に雪が敷き詰められる頃を見計らうようにして少しずつ落ちてきます。種子を持った花塊を風で転がそうという樹のもくろみでしょうか。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-11 11:57
- 1月10日 小さな氷柱—岩壁の下に生じた小さな氷柱(つらら)に朝陽があたり、きらきら輝くようすに見惚れていました。砂岩なのでしょうか、粘土質の岩でしょうか、焦茶色の岩肌が透明な氷柱に映し込まれ、そこへ屈折で生じた青や橙がわずかな彩りを添えているあたりにも感心したのでした。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-10 08:26
- 1月9日 クリオネ—岩から滲み出した湧水が凍った氷壁の内部。そこへ流れ込んできた、ひと筋の粘土質の水。それもまた凍り付き、キャラメル色の魅力的なデザインをつくりました。ふわふわ漂う感じが、どこか深海のクリオネを想わせませんでしょうか。あるいはできそこないのオバケかな。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-09 08:24
- 1月8日 冬の朝の渓流―光のスポットを浴びて、水面が輝いていました。そこをカワガラスが頻繁に行き来していました。光の輪の中を通過するたび、小さな鳥影が生じるのです。そのようすを撮ってみようかと待ち構えてはみたものの、根気もなければ集中力にも欠けるため、あえなく降参。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-08 08:12
- 1月7日 新雪の朝—夜半しんしんと雪が降り積もった翌朝、奥入瀬バイパスにいちばんのり。時刻は8時。早朝ではありませんが、谷の中に陽が入ってくるのは、ちょうどこの前後。もちろんまだ誰も歩いていません。そこをスノーシューでひとつひとつ足跡を付けていきます。意味もなく快感。
- 奥入瀬バイパス
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-07 08:08
- 1月6日 冬の森は明るい—そうブナの森は特に明るく感じるのです。きっと白っぽくてつるりとした樹皮のせいもあるのでしょう。見通しもよく、たたずんでいると気分がことのほか清々しくなってきます。蔦の森は起伏もおだやか。若い頃にはスノーシューを履いて、よく歩き回ったものです。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-06 10:12
- 1月5日 殻斗—雪上に落ちていたのはブナの殻斗(かくと)。栗の毬(いが)のようなもの。地吹雪に転がされ、運ばれてきたのでしょう。円味あるとげとげの内側にまで雪が入り込み、硬く凍りついています。この殻斗が雪の上で受けてきた、いくどとない試練を物語るようでもありました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-05 10:07
- 1月4日 疾風—今朝も凍った沼を眺めにきました。昨晩もうっすら雪が積もったはずなのに、氷上を駆け抜けてゆく疾風に飛ばされて、ざらめのような氷面がさらされています。そこにブナの落葉が1枚、貼り付いているのがわかりました。飛ばされぬよう必死に耐えているようにも見えました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-04 09:40
- 1月3日 凍った沼—蔦沼はすっかり凍り付いています。氷の厚さはいったいどのくらいのものなのでしょう。対岸の森が、雲間から差した陽に照らされてぼんやり輝いていました。なんだかととことこ歩いて行ってみたいような気もしてくるのですが、もちろんそんな命知らずなことはやりません。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-03 09:40
- 1月2日 沼の底の落葉—蔦沼の底にたまっていたブナの落葉。秋、茶褐色に色づくとやがて硬いまま落ち、そのまましばらくのあいだ形はかわらぬまま。ゆっくりと分解されていくのです。これだけの落葉が毎年欠かさず降り積もっているのですから、沼の底はやがて嵩上げされていくでしょう。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-02 09:37
- 1月1日 雪山—蔦沼の森の向こうに真ッ白な顔をのぞかせているのは、南八甲田連峰の赤倉岳。沼まわりの森はうっすら雪をかぶっているくらいでしたが、どっしり構えた山の姿はすっかり雪景色。双眼鏡で見ると、稜線にぽつぽつと立つアオモリトドマツの木々は完璧な樹氷となっていました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2021-01-01 09:35
- 12月31日 雪化粧—渓流沿いの森は、すっかり雪景色となりました。ひっそりとして、きりりとして、それでいながらどこかあたたかさの感じられる風景です。黒い水の流れとのコントラストも素敵です。雪化粧、という言葉が本当にぴったりの眺めでした。厚い雪雲に覆われた年末の一日でした。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-31 14:38
- 12月30日 飛沫氷—滝の飛沫(しぶき)があたる苔むした岩壁に、礫(つぶて)のような氷が無数にできていました。水飛沫が凍ったものなのか、それとも濡れた苔から滴る小さな雫(しずく)が凍ったものなのでしょうか。コケと氷の競演です。緑の壁を背景に、きらきらと美しく見えました。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-30 14:40
- 12月29日 氷柱の揺蚊(ユスリカ)—小さな氷の柱にとまっていました。成虫は口器も消化器も持たないため摂食しないということですが、越冬しているものたちはしばしば集まってさかんに氷上の<何か>を吸っている(もしくは舐めている?)ようにも見えます。実際にはどうなのでしょう。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-29 12:48
- 12月28日 鎖状の氷紋—氷の表面に現れるこうしたデザインも氷紋と呼んでよいのかどうかわかりませんが、非常に面白いデザインです。これは鎖を想わせますが、なかには脳の血管をイメージさせるようなものもあります。自然の中に生じる、こうしたさまざまな<かたち>はなかなか神秘的です。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-28 12:27
- 12月27日 冬の蜘蛛—樹皮のすきまにクモがひそんでいました。越冬中の個体なんでしょう。冬眠するのなら、もっと深いところにまで行けばよいのに、こちらは厳寒期も活動を継続するつもりなんでしょうか。ふさふさの毛が生えているから、防寒対策はばっちりだぜ、という自負を感じました。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-27 11:37
- 12月26日 若いブナ林—二次林と呼ばれる、いちど伐られた跡に生育した若いブナたち。個性的な大樹の方が見ごたえがあるのはもちろんですが、「これから」を担う若い木々が居並ぶ姿もよいものです。地衣類に覆われた樹皮に、午後の冬の陽があたり、なんともいえぬ素敵な色となりました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-26 12:17
- 12月25日 飴色の屏風—橋の欄干に生えていたのはたぶん貝殻茸(カイガラタケ)でしょう。年輪のような、環紋(かんもん)と呼ばれる模様が独特です。ふだんはもう少し灰色っぽさが目立つのですが、雨雪に濡れそぼってすっかり飴色になっていました。立ち姿が小さな屏風を想わせました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-25 12:46
- 12月24日 カバー—これは沢胡桃(サワグルミ)の冬芽に付いていたカバーです。冬芽を寒さから護るためのものなのですから、冬の間じゅうずっと付けていればよいものを、なぜか初冬で落としてしまい、あとは裸芽で過ごすのです。たぶん「なにごとも初めが肝心」ということなのかなあ。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-24 12:30
- 12月23日 お気に入りの樹—人に個性があるように、森にもいろいろな樹があって、妙に魅かれてしまうものがあります。かたちがいいとか、高いとか太いとか、そういうことだけでなくて、そのもうひとつ向こう側にある、樹が放つ「気」のようなものに感応できるか否かなのだと思います。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-23 12:16
- 12月22日 枯水草—蔦沼の湖岸にはヨシやスゲ、ガマなどの生えた猫の額ほどの湿地がありますが、カキツバタなども少し混じっていて、なかなか面白いところ(人為的に持ち込まれているものも少なからずあるようですが)。なかでも、冬枯れのガマの群れが枯淡の味わいがあって好きです。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-22 11:59
- 12月21日 裂開果—蔦沼のほとりに生えている柳虎ノ尾(ヤナギトラノオ)の裂開した果実(蒴果=さくか=)です。種子はもう散布された後のようですね。夏のあいだは、もしゃもしゃした黄色い花穂(小花の集まり)一本の茎にいくつもくっついています。この姿とは似ても似つきません。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-21 11:58
- 12月20日 放射状氷紋—薄氷が割れる時に生じる、クモ型の亀裂。お隣の、ブナの黄葉した落葉がワンポイント。放射状の氷紋(ひょうもん)と呼ばれる現象だそうですが、とっても不思議。どうしてこんなふうになるのか、やさしい物理的な説明がほしい。もしかして、知らないのは自分だけ?
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-20 11:56
- 12月19日 猿梨散布—苔の生えた岩の上に置かれていた動物の糞。円筒形で、やわらかい果肉と果皮、そして独特のデザインの種子(タネ)がたくさん混じっています。種子図鑑で見たら、猿梨(サルナシ)でした。どうやらテンのマーキングのよう。木登りが得手なのでフルーツは食べ放題。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-19 11:43
- 12月18日 口紅茸—割れた端に差された紅色が「口紅」を想わせる、ということからきたクチベニタケというキノコ。いい名前。でも、ころんとしたアラレ菓子みたいな形状から口紅を連想するなんて、どなたが名付け親なのか存じませんが、実にオシャレな発想じゃないかと感心しています。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-18 14:41
- 12月17日 連雀のおとしもの—冬鳥の連雀(レンジャク)たちが飛来し、森のくすだまこと寄生木の実をせっせとついばんでいます。食事が済むとその場で種子の混じった糞を落としていくのですが、見れば、ほとんどそのまま出してしまっているようで、ちゃんと食べたのかしらとも思います。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-17 11:13
- 12月16日 くすだま—裸木の森は寄生木(ヤドリギ)たちの観賞にうってつけの季節。高木の頂上部に並んだ、くすだまのようなものがそれ。ユニークな存在です。低いところにできたものなら、ぜひ双眼鏡で観てみましょう。肉厚の緑と、そのあいまに朱色や黄色の果実を愛でることができます。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-16 11:30
- 12月15日 葉脈の質感—蝦夷紫陽花(エゾアジサイ)や糊空木(ノリウツギ)の装飾花のドライフラワーは、萎み、腐っていく段階によって、その葉脈の浮き出し方が異なって見えます。枯れているくせに、妙に艶めいた質感で迫ってくるものもあるので、ついカメラを向ける対象となるのです。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-15 09:57
- 12月14日 氷上の窓—蔦の森にある瓢箪(ひょうたん)沼は水面が穏やかなためでしょう、わずかな冷え込みで割とすぐに凍ってしまうのですが、ところどころ凍りきらない水面も残ります。そこへ周囲の裸木のシルエットと浮草の緑が映し出されると、氷上に開いた窓のようにも見えるのです。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-14 15:08
- 12月13日 ブナの殻斗(かくと)—小さな種子を二つ、しっかりと護(まも)っていた殻斗(毬=いが=のようなもの)が、勤めをなし終えて森の底に転がっていました。やがて菌類に分解されてしまう運命でしょうが、差し込んできた冬の光から、その功労を讃えられているようにも見えました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-13 13:02
- 12月12日 真樺のタネ—蝶ちょみたいなかたちをした、愛らしい小さなもの。たくさん散らばっていれば、樹木の種子だとすぐにわかりそうなものですが、たったひとつだけだとなんだか不思議な印象を持ちました。マカバ(ウダイカンバ)のタネが上手く風に乗り、遠くへ飛んできたのでしょう。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-12 12:53
- 12月11日 菊の花のなごり—何という花だったか、もうわからなくなってしまいましたが、キク科の花の綿毛が、とってもいい感じで残っていました。綿毛の付いた種子を風に乗せて飛ばすのが仕事なのでしょうが、あわてて一気に放たずに、少しずつ時間差で散布するのが「流儀」なのでしょう。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-11 08:57
- 12月10日 霜柱—よく耳にする割には、実物にお目にかかる機会はほとんどありませんでした。遊歩道の傍の、わずかに土が露出した部分が盛り上がり、そこから蒼い氷の柱が顔を出していました。おお、これが霜柱かと感無量。雪がどさっと降ってしまえばすぐに会えなくなる、駆け足の風物詩。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-10 13:01
- 12月9日 落葉模様—やっぱり落葉のデザインが好きで、なんやかんやとついカメラを向けてしまうのです。これも、もう何の葉っぱを撮ったのか、それすら記憶にありませんが、なんともいえぬ質感に魅かれたのでした。もはや腐っていくだけの運命だというのに、妙な存在感に満ちていたのです。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-09 12:17
- 12月8日 蔓梅擬—雪の上に落ちていた、つやめいた赤い木の実。よく見れば黄色いカバー付き。冬らしからぬ彩り。お正月の飾りみたい。ツルウメモドキ。梅に似ているけど蔓状のニセモノっていう、へんてこな名。果実は黄色で、熟すと3つにぱかり。赤い種衣に包まれた種子の登場です。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-08 11:17
- 12月7日 墜ちた巨人—またぞろホオノキの落葉です。赤褐色に変色し、虫に喰われたように無数の小さな穴が目立ちます。よくよく見ると穴が開いているのでなく、透けているのです。虫喰いではなく、菌類によって細かく分解が進んでいるのでしょう。墜ちた巨人、という言葉を想いました。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-07 12:14
- 12月6日 歯のような氷—自然に空いたものなのでしょうか、それともノネズミのトンネルか何かなのでしょうか、地上の、ごくわずかな傾斜にできた小さな穴。そこに伸びた極小の氷柱(つらら)。まるで「歯」のよう。いったいどのようにして、こういう不思議な造形が生まれるのでしょう。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-06 11:54
- 12月5日 実のひとふさ—高木になるハリギリの実を間近に観る機会は少ないので、こんなふうに風か何かで地上に落ちてくれるとありがたいもの。なんだかだいぶ古びてしまっていることについては、まあよしとして。ほうほう、ふむふむ、こんなふうになっているのかと、ためつすがめつ。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-05 11:13
- 12月4日 氷の色—粘土質の土壌から滲み出てきた水が凍って、琥珀、もしくはキャラメルのような色あいになっていました。子供の頃、親戚の家に遊びにいったら、テレビの上にこういう色の石が飾ってあって、それにやけに魅かれてしまい、滞在中にずっと眺めていたことを思い出しました。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-04 14:42
- 12月3日 木の実—雪の上に落ちていたのは、ミズキの実でしょうか。だいぶ萎びて干し葡萄といった雰囲気。種子散布の方法としては、きっと鳥に食べられることを期待していたのでしょうけれど、残ったものはこうして枝ごと地上に落ちてしまうというのもひとつのやり方なのかもしれません。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-03 13:47
- 12月2日 蔓の毛—毛のみっしり生えた「巻きひげ」状のもの。植物なのに、なんだか妙にけものくさい感じがします。クズでしょうか。でも「巻きひげ」はなかったはず。茎の先が、くるくると「らせん状」になったものかしら。写真1枚、その場で撮りっぱなし。いまや確かめようもありません。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-02 13:32
- 12月1日 朴(ほお)の落葉—大きく見ごたえがあるせいか、ホオノキの落葉にはつい目が向いてしまいます。散りはじめは早いものの、森の底にはまだ硬いままの葉が目立ちます。葉の裏側にぐっと浮き出た葉脈の筋が「構造」という言葉を想起させ、ただの落葉とはちがうものを感じるのです。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-12-01 14:32
- 11月30日 枯木の華—森の木々は、もはやどれもすっかり葉を落としきりました。陽が陰っている時には寂寞とした森も、あたたかみのある午後の陽があたると見違えるようです。裸になった無数の小枝がきらきらと逆光に輝くさまには、なんだかこの季節ならではの華を感じて嬉しくなります。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-30 14:22
- 11月29日 樺の白—雨の森。鵜松明樺(ウダイカンバ)の白い樹皮が森の底でよく目立っていました。この樹皮は燃えやすく、しかも雨中でも消えないとされます。鵜飼(うかい)が漁の際、この樹を松明に利用したことから「う・たいまつ・かんば」と呼ばれ、それが約まった名称であるとか。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-29 15:04
- 11月28日 魔女の森―この季節、すぐそこにまで闇が迫った薄暮帯にこそ、森の木々を見上げてみたいと思います。そこには独特の不気味さ、コワさがあり、夏の森に棲む魔女と、冬の森に棲む魔女とでは、どうもタイプが異なるのではないかしら、などと、つい妙なことを考えてしまうのです。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-28 16:07
- 11月27日 苔の緑—森の底に横たわる大きな倒木。晩秋初冬の森の緑は、もはやこうした倒木や岩の上にしか見られません。常緑といってもよい苔(蘚類)の緑は、うすら寒い光景の冬枯れの森において、とても貴重な存在に感じます。緑の敷布をかぶせられた倒木は、なんだかとても幸せそう。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-27 15:57
- 11月26日 蜂の巣のぬけがら2—こちらはややがっしりとした印象のある蜂の巣でした。小型ではありますが、容易なことでは毀れない感じがします。同じ脚長蜂(アシナガバチ)系のものなのか、それとも小型の雀蜂(スズメバチ)系なのか、よくはわかりませんが、拾って帰りたくなりました。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-26 14:50
- 11月25日 蜂の巣のぬけがら1-森の底に、いかにももろそうな蜂の巣のぬけがらが転がっていました。秋の長雨には耐えられそうもなく、すぐにも壊れてしまいそう。薄い黄色もまたそのはかなさをいっそう伝えてくるようです。きっと黄星脚長蜂(キボシアシナガバチ)の古巣なのでしょう。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-25 11:26
- 11月24日 胞子紋—それまで理科の実験くらいでしか目にしたことのなかった胞子紋(ほうしもん)を森で見つけました。きのこの傘裏にある襞(ひだ)から落ちた胞子がつくるデザイン。本来なら風散布させたかったもの。それがあえなく傘の直下に積もってしまうと素敵なアートのお目見えに。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-24 11:02
- 11月23日 滅ぶということ—こちらも蝦夷紫陽花の装飾花。春までそのままのかたちを保つものもあれば、このように何かに喰われてしまうのか、単に腐食していく過程なのか、かたちをそこなっていくものもあります。滅び、という言葉を想い、静かにしておだやかな壮絶さを感じてしまいます。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-23 09:37
- 11月22日 蝦夷紫陽花の枯花―蝦夷紫陽花(エゾアジサイ)の装飾花が、淡い茶褐色に変わり、なかなか渋い魅力のあるドライフラワーと化していました。葉脈がつくる網目模様は、白花だった頃には目立たなかったような気がします。実はこういうデザインだったのかと感心してしまいました。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-22 11:06
- 11月21日 天南星の赤—はらはらとわずかな雪が降り、それがさっと融け、しっとり濡れた森の底。朽ちて黒化した落葉の群れのもと、まるで場違いな花のように、見るも妖艶に輝いていたのは天南星(テンナンショウ)の毒々しいともいえる強烈な赤い粒。初冬の、なんとも蠱惑的な彩り。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-21 14:51
- 11月20日 初雪と黄葉—まだ黄色い葉が残っているうちに初雪が降りました。とてもよい感じの眺めとなります。散りきらない「なごりの黄葉」の上に、薄く、うっすらと降り積もった白い雪。晩秋と初冬のせめぎあい。そろそろですよ、もうそろそろ冬ですよと、やんわりせかしているような。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-20 13:56
- 11月19日 水草の緑—まわりからどんどん色が失われていくなか、渓流の水中にたゆたう梅花藻(バイカモ)のてらてらとかがやく緑だけは、あいかわらず健やかです。ところが水量が減り、水上へむきだしとなってすっかり乾いてしまった緑のありさまは、なんだかいたいたしい感じがしました。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-19 13:47
- 11月18日 水底の砂利—今日はしばらく川底の小石の群れを眺めていました。ひと粒ひと粒が際立って、とても美しいのです。水門が隔てられる晩秋の奥入瀬は水量が減り、浅くなった流れは支流から供給される水も混じって透明度が増します。水底の玉砂利の存在感が引き立つ季節となるのです。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-18 12:37
- 11月17日 落葉と小魚—茶色く変った、たくさんのブナの落葉と、枯れたスゲの味のある組み合わせの妙を楽しんでいましたら、小さな魚がまっすぐに泳いで来るのがわかりました。そこへちょうど、ほんのりとした光の輪が差し込んできて、ほんわかとしたおだやかな晩秋の情景となりました。
- 蔦沼
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-17 11:49
- 11月16日 青い水滴—いやに底冷えすると思っていたら、いきなりバラバラと雹(ひょう)が降りました。と思うと、その雲はすぐに通過していってしまい、間もなくさあっと太陽が顔をのぞかせました。そんな気まぐれな陽光を受けた雹の粒は、あっというまに青い水滴に変わってしまいました。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-16 11:58
- 11月15日 雫氷(しずくごおり)—苔むした大きな倒木の下にできた小さなつらら。ついこの前まで、厚い苔の敷布から、ぽつん、ぽつんと滴っていた雫(しずく)が凍ってできた、なんとも端整な芸術品です。まわりには雪の白がまだ見えず、苔の緑と蒼白い氷だけの組み合わせが素敵なのです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-15 13:07
- 11月14日 枯野色—奥入瀬で、こうした草原的な風景を目にすることはありません。これは渓谷の上にある牧草地での一枚。原生的な森の自然に対し、ごくごく人為的な姿です。とはいうものの、とても秋らしい景観でもあります。枯野とは、風情あるもの。なんだか一句読みたくなってきます。
- 惣辺牧野
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-14 11:01
- 11月13日 葛の毛—「マント群落」といって、森のきわなど陽当たりがよく、風通しの良いところで、森の内部を乾燥から護るように繁茂する外套的蔓植物である葛(クズ)の大きな葉が、今年もその役割を終え、すっかり萎びた姿となっていました。逆光に輝く蔓の毛だけが健在でありました。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-13 13:27
- 11月12日 大樹の影絵—長い冬が到来しようとしています。これからの森は、しばらくのあいだ裸木の季節。夏から秋の衣装を脱ぎ捨てた姿は、その樹そのもののかたちがわかります。見上げると、ああ、この樹って、実はこんなスタイルをしていたのだなあ、と感心させられることしきりです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-12 11:22
- 11月11日 熊の毛—国立公園の中に新調された木製の案内板が、めちゃくちゃに咬み毀(こわ)されていました。その痕には、黒い獣毛がたくさん。月ノ輪熊(ツキノワグマ)のしわざです。新しいボードが発している塗料の匂いに引き寄せられ、思わずガジガジと咬んでしまうのでしょうか。
- 十和田湖畔
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-11 12:27
- 11月10日 落ちた尺蛾—初雪を迎える前のブナ林で、まるで粉雪が散るように舞う小さな白い蛾、七筋並尺(ナナスジナミシャク)が、その生を終えて水面に落ちていました。初雪を想わせる蛾なのに、雪降る前にいなくなってしまいます。翅の上の水玉が、その一生を讃えているようでした。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-10 15:04
- 11月9日 蔓紫陽花の黄葉2—黄葉が比較的長く続く上に、圧倒的な量というか枚数で魅せる蔓木本ですから、どうしてもその全体を観賞してしまいがち。そんな蔓紫陽花の黄葉の1枚と向かいあう機会がありました。だいぶ茶褐色味が入りつつありましたが、端整にして渋い魅力が素敵でした。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-09 10:22
- 11月8日 蔓紫陽花の黄葉1—葉を落としはじめた森の中で、午後の逆光にひときわ美しくかがやく蔓紫陽花(ツルアジサイ)。ぱっと見、そのあまりの美しさに「ハテなんの樹の黄葉か?」と二度見して、なあんだ、ブナの裸木に巻き付いていたツルちゃんだったか、ということ、よくあります。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-08 14:59
- 11月7日 山漆の実—奥入瀬で身近な漆(ウルシ)は、大木に巻き付いてよじ登ったり、林床を這ったりしている蔦漆(ツタウルシ)なのですが、気を付けて見ていると山漆(ヤマウルシ)の存在にも気づきます。特に秋から冬には、個性的なデザインを誇るドライフルーツの束に目を引かれます。
- 十和田湖畔
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-07 11:34
- 11月6日 低木の黄葉—黄葉の森は、外側から全体を眺めていても美しいもの。ですが森の内部で観賞する低木層の黄葉もまた素晴らしい。森は高木・亜高木・低木と、基本的には三層に分かれますが、下層にあたる低い木々の秋の装いもまた見逃せないのです。絵葉書にでもしたい景観美でした。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-06 10:31
- 11月5日 晩秋の飛蝗—冬を感じる頃になると現れる飛蝗(バッタ)がいます。透明感のある、はかなげな緑で、落葉の上や樹の幹上で、ひくひく長い触角をゆらめかせているのです。季節ちがいな印象もあるものの、シーズン最後の緑の化身のようでもあり、出逢えると幸せな心持ちとなります。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-05 15:16
- 11月4日 湖面の錦—紺碧の水面にたゆたう錦の落葉。黄色は桂(カツラ)でしょうか。橙褐色に見えるのは橅(ブナ)でしょうか。湖を囲む森たちからの、秋の贈りもの。遠景で眺める湖も美しいものですけれど、その大きな景観美は、小さなパーツによって構成されていることを実感します。
- 十和田湖
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-04 14:47
- 11月3日 紅の魅力―沢胡桃(サワグルミ)の細い木が居並ぶ中に、滲むような紅が浮かんでいました。沢胡桃は黄葉なので、これはモミジの紅でしょう。森ではいろいろな高さの木々が層をつくっています。それぞれがそれぞれに彩られ、その組み合わせが、より深い美観をつくるのです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-03 11:03
- 11月2日 森の神—十和田湖外輪山の中腹に立つ、近年ちょいと知られるようになった橅(ブナ)の大木。もちろん新緑もよいのですが、黄葉がなかなかの迫力で、時間帯や雲の加減、時の推移などで表情がどんどん変わっていくところが魅力です。「森の神」と讃えられるのもさもありなんです。
- 十和田湖外輪山中腹
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-02 14:43
- 11月1日 大紅葉・山紅葉—黄葉が主役の奥入瀬で、紅の彩はことのほか目を引きます。大紅葉と呼ぶべきか山紅葉と呼ぶべきか、鋸歯の多寡で区別するなんて、その中間もあるわけで、とてもあいまい。美しい紅を前に、なんともつまらない話に拘泥しているようで、いやになっちゃいます。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-11-01 11:29
- 10月31日 穴のある朽木—樹皮も苔も何もかもが落ちてしまった枯木。皺だらけの姿がとてもいい味を出しています。歳月を経てきた渋み、とでもいうべきものでしょうか。アンティークとして飾っておきたいくらい。けれどやっぱり花は野に置け蓮華草。森のものは森で鑑賞するのがいちばんです。
- 蔦の森
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- 2020-10-31 13:11
- 10月30日 秋艶の森—奥入瀬の下流域に位置する惣辺(そうべ)の森は、ブナやトチの高木層と、ハウチワカエデやオオモミジらの亜高木~低木層が織りなす美しい森です。秋の彩りはことさらで、しかも夕方に近づくにつれシンプルなつやめきとでもいうべきものが少しずつ増していくのです。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-30 15:21
- 10月29日 黄葉の紅味—青空を背景にしたカエデやモミジの黄葉は、秋定番の美景です。カメラを向けはするものの、目で見た以上に美しく撮れるということは本当に稀。ベタな写真は手許に残ることも少ないのですが、やや紅味が差した黄色のオオモミジは、なんとも捨てがたい美しさでした。
- 奥入瀬下流域
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- 2020-10-29 13:57
- 10月28日 舞鶴草黄葉—黄葉した舞鶴草(マイヅルソウ)の葉が、役割を終えてへたっています。清楚な薄黄色。緑の頃はてらてらと艶めき、厚ぼったい葉との印象が強かったのですが、こうして目にすると存外、華奢なイメージ。流れるような葉脈の曲線もまた、いかにも繊細なものに映りました。
- 奥入瀬下流域
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- 2020-10-28 13:48
- 10月27日 山葡萄の実—苔むした倒木の上に山葡萄(ヤマブドウ)の実が房ごと落ちていました。深い藍色に染まった、じゅうぶん熟れた実の連なり。なんだか渋い宝石のようにも見え、それらをつなぐ紅い茎またお洒落です。美味しそう、という思いよりも先に綺麗だなという思いが先立ちました。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-27 11:16
- 10月26日 裂開—大姥百合(オオウバユリ)の薄くて平べったい種子を大量に格納している「袋」がいよいよ裂開し、風による散布が始まっています。見るたびに奇妙な、たいへん個性的なデザイン。花姿とは似ても似つかない、ちょっとグロテスクな魅力もあり、また機能的な美でもあるのです。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-26 10:56
- 10月25日 秋の滝—滞ることなく落ち続ける滝の飛沫。この滝は白糸の滝。歩道からは渓流をはさんでかなりの距離があり、その清冽さを体感することはあいにくとかないませんけれど、カメラのレンズ越しに眺めているだけでも、なんだか日を追うごとに冷たさを増しつつあるような気がします。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-25 12:10
- 10月24日 水面の落葉群—この秋もまたいったいどれほどの葉が散ったのでしょうか。そう想うと気が遠くなるようです。水面をみっしりと埋めた水楢(ミズナラ)と橅(ブナ)の落葉はいずれも色づいています。ナラの落葉の裏だけがやけに白く目立つのはなぜかしらと、埒もない考えに耽ります。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-24 13:22
- 10月23日 沢胡桃の幼木—これは芽を出して数年ほど経った沢胡桃(サワグルミ)のこども。ちゃあんと黄葉しています。この夏、しっかり光合成をして働いて、これからの越冬のための養分を、そして来春また新たな葉を出すための力を貯め込んだのでしょう。小さくても、もう一人前の樹木です。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-23 10:59
- 10月22日 あざやかな森—秋雨という言葉もあって、それはそれで風情があってよいのですけれど、やはり「秋晴れ」の魅力にはかないがたいような気がします。透き通るような青空のもとで輝くブナの黄葉。あざやかな森。こころが洗われるとは、きっとこういうことをいうのだろうと思います。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-22 15:04
- 10月21日 初雪蛾—雪を迎える前、ブナの幹から粉雪が散るように小さな白い蛾の群れが舞い上がることがあります。ややするとまた幹上に貼り付き、どこにいるのかわからなくなってしまいます。七筋並尺(ナナスジナミシャク)という冬尺蛾の仲間ですが、私は勝手に初雪蛾と呼んでいます。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-21 09:12
- 10月20日 秋の華―ブナは新緑のさわやかさも素晴らしいですが、黄葉の華やかさにも見惚れてしまいます。華やかといってもケバケバしさはなく、落ち着いた雰囲気。そこがよいのですね。逆光に透けるイエローは新緑並みに目に優しくて、いつまで眺めていても見飽きることがありません。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-20 10:23
- 10月19日 葉上の樹幹流—茶褐色に変色したブナの落葉が秋雨に濡れた樹幹にぺたりと貼り付いていました。ゆるやかな樹幹流が、なんだか当然のようにその葉の上を滑っていき、円い鋸歯の端から、したたるように流れ落ちていました。そのようすを長いあいだ、ただじっと見つめておりました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-19 07:58
- 10月18日 殻斗—森の底に散らばっているブナの殻斗(かくと)。栗の毬(いが)のようなもの。種子を護っていたカバーです。それほど鋭い棘ではないものの、次世代保護への強い意思を感じるデザインです。この無数の殻斗が落葉のはざまに埋もれ、やがて菌類によって土に還っていくのです。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-18 11:48
- 10月17日 落ちる葉、残る葉—ブナの葉の色づきが進み、落葉も進んでいきます。夏のあいだの<もこもこ>がうそのように、枝葉の間がすきはじめています。ただ、早々に散ってしまう葉とはうらはらに、冬が来て春を迎えても、ずっと枝先にしがみついたままの葉もあるのですから不思議です。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-17 14:36
- 10月16日 軸まで染まる—黄葉とは、その葉軸までが見事に黄色に染まります。ここからぽろりと葉が離脱し、落下するのです。それがどうした、といわれたらそれまでなのですが、あらためて眺めていると、そのあたりまえがなんだかすごい現象のようにも思えてきて、妙に感心してしまうのです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-16 15:36
- 10月15日 栃の実—ブナやミズナラと違いトチノキには豊凶がほとんどありません。毎秋たくさんの実を目にすることができます。とても魅力的なデザインなので、ついカメラを向けてしまいます。ただその割には、トチの実の「かわいらしさ」をうまく表現できた写真がなかなか撮れないのです。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-15 12:46
- 10月14日 薄黄橅ノ実茸—ブナの実から生える、ひょろひょろした感じの菌類。ちょっと長い名前なのですが「ウスキブナノミタケ=薄い黄色のブナの実のキノコ」と漢字表記するとかなり記憶しやすくなります。生物の名称は、その意味を漢字で書くと視覚効果とあいまって覚えやすくなるのです。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-14 10:19
- 10月13日 カネゴン—いかにも硬そうなキノコが、1本の細い小枝をはさみこんでいました。生長の過程でたまたまそうなっただけのことなのでしょうが、そこには「絶対に離すものか」というかたくなさを感じてしまい、ウルトラQに出ていた守銭奴の怪獣のことをフト思い出してしまいました。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-13 11:22
- 10月12日 菌に黴—鼻の孔を想わせる、妙な亀裂をもったキノコがあって、それに白い黴(かび)がびっしりと生えているのを見て、思わず「気味が悪い」と引くと同時に、菌類に菌類が寄生するということの不思議に、やっぱり思わず凝視。朝の射光に透かしてみれば、なんとも妖しいかがやき。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-12 08:27
- 10月11日 舞踏会—黄色に染まったブナ、ハウチワカエデ、オニイタヤ、オオバクロモジたち。ハウチワカエデは紅葉のほうがふつうかと思っていたら、まわりに気圧されたのでしょうか、ほとんど黄葉。風が吹くたび千々に乱れ、まるで葉っぱの舞踏会のよう。指揮するのはもちろんブナの大木。
- 十和田湖畔
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-11 15:14
- 10月10日 山漆の紅葉—奥入瀬ではそれほど見かける機会の多くない山漆(ヤマウルシ)ですが、蔦漆(ツタウルシ)同様、秋には見事な紅葉で目を引きます。澄んだ青空を背景にする時、とてもよく映えます。ところどころ、葉が虫だかなにかに喰われているあたりも、なかなかよい感じです。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-10 15:10
- 10月9日 落葉Ⅲ—ミズナラの黄葉が落ちました。朝のひかりに透かされたそれはなんともいえない色あいです。虫喰い痕の穴も、茶褐色の腐れも、そのなにもかも絶妙のバランスでひとつの作品を作っているようにも見えます。無数に降る落葉のひとつひとつの個性を想うと、目がくらみそうです。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-09 10:18
- 10月8日 落葉Ⅱ—落葉後しばらく経ち、茶褐色のまだら模様となったホオノキの葉。もはや「落葉」というよりは「枯葉」と呼ぶにふさわしい姿で、渋い魅力にあふれています。この樹の落葉は時間と共に変化していきます。どの段階にもそれぞれの持ち味があり、見ていると面白いのです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-08 09:43
- 10月7日 落葉—ホオノキの大きな落葉がありました。まだ緑色味を残しているものの、虫喰い状に茶変しつつあります。本当の虫喰い痕もあって、こちらは穴があいています。中央をはしる、太くがっしりとした中肋(ちゅうろく)と呼ばれる葉の主脈だけが、まだ勢いを失っていないようでした。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-07 13:46
- 10月6日 コラボ—腐倒木に現れた白いキノコたち。手前の樹枝状に分岐しているのはおそらく白姫箒茸(シロヒメホウキタケ)、その後方、朽木の上を覆う緑藻をベースに立っている小さな棍棒(こんぼう)状ものは白魚茸(シラウオタケ)。こちらは地衣類でもあり、その名は錐茸(キリタケ)。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-06 09:57
- 10月5日 月夜茸—夜に発光することで知られる月夜茸(ツキヨタケ)。秋が深まるにつれ、あちこちの朽木や弱勢木に発生します。椎茸(シイタケ)に似ることから毎年、中毒事件があると聞きますけれども、秋雨に濡れそぼっている印象はなかなか妖しいもの。とても食する気にはなれません。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-05 14:05
- 10月4日 いもり—滅多に出逢うことのないイモリがいました。ふだんは沼の底に棲んでいて、地上に姿を見せることはまれです。それが沼のほとりの苔むした朽木の上に、どういうわけかひょっこり出てきていたのです。秋雨でしっとり感が増したコケの感触を味わってみたかったのでしょうか。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-04 13:49
- 10月3日 山赤蛙—落葉の向こうから山赤蛙(ヤマアカガエル)が顔を出していました。もうそろそろ冬眠の準備に入るという頃でしょうか。なかなかよい面構えをしています。じっとしているのでしばらくのあいだ向かいあっていました。金色の輪に縁どられた目に秋の森の景が映っていました。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-03 16:37
- 10月2日 卵の殻—森の底に白い卵の殻が転がっていました。この時季に産卵する鳥はさすがにいないでしょうし、無精卵は親鳥が腐敗を恐れ早々に捨てます。抱卵放棄で孵化しなかったものが何らかの理由で巣の上から転がり落ちてきたものなのでしょうか。もしかするとカラスのしわざかな?
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-02 09:34
- 10月1日 開傘前—傘を開く前のきのこが出ていました。坊主あたまのかわいらしさが魅力的です。きっとテングタケ(天狗茸)の仲間でしょう。傘の色や形状、縁に溝線があることなどから、タマゴテングタケモドキ、ミヤマタマゴタケあるいはバライロツルタケなどの名称が思い浮かびました。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-10-01 09:44
- 9月30日 溶岩の貌(かお)—奥入瀬の転石は八甲田カルデラから噴出した火砕流が固まった溶結凝灰岩です。一方、渓流の流れ出しに当たる十和田湖子ノ口の湖面に見える岩は十和田火山の溶岩であると知りました。すると岩の貌がなんとなく違ったものに見えてきたりするのですから不思議です。
- 十和田湖子ノ口
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-30 17:35
- 9月29日 目玉模様—楠蚕(クスサン)の目玉模様です。単純なデザインのようで、よく見るとなかなか手が込んでいます。ふだんは前翅(ぜんしょう)で隠されているのですが、採食者である鳥などに襲われた時にはそれを開き、この目玉をぎょろりとばかりに見せつけ、敵の気をそぐのでしょう。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-29 08:51
- 9月28日 楠蚕—大きな山繭蛾(ヤママユガ)の仲間である楠蚕(クスサン)の姿を見かけるようになりました。翅に象られた大きな目のような眼状紋(がんじょうもん)が特徴。ホオノキの若木の葉の上で、巣立ったばかりのヒナ鳥のように何度もパタパタと羽ばたきを繰り返していました。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-28 08:40
- 9月27日 青鷺の頭骨—青鷺(アオサギ)が頭骨だけとなって森の底に転がっていました。水際で小魚や両生類などを探索中、そっと忍び寄ってきた狐(キツネ)にでも襲われたのでしょうか。哺乳類たちが持ち去ったあとなのか、あたりに他の骨は見当たらず、ただ長い嘴だけが残されていました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-27 14:42
- 9月26日 流水の美—この世でじっと見つめていて飽かぬものがふたつ。ひとつは火のゆらめき。焚火の炎を凝視している時。もうひとつは水の流れ。豪快にして繊細。優美と荒々しさを併せ持ち、さまざまに変化する姿に見入らされます。奥入瀬の美は、滞ることなき水そのものでもあるのです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-26 16:49
- 9月25日 臭木の実—あまたある秋の樹木の実のなかでも、この臭木(クサギ)くらい個性的なものもないでしょう。紅い星に乗った藍黒色の球体が、艶めいた独特の輝きを放っています。夏の白い花にしても、どことなくあだっぽい感じがありましたが、負けじと果実も妖しい雰囲気を放つのです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-25 16:52
- 9月24日 這犬榧の実—犬榧(イヌガヤ)の変種。幹の根元が曲がった積雪対応の樹形。ゆえに「這う」犬榧でハイイヌガヤ。緑色の未熟な果実は、翌年の秋までかかって赤紫色に熟します。植物学的には果実ではなく種子と呼ぶそう。でも液果状なのですから、やっぱり果実といいたくなります。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-24 12:46
- 9月23日 なじむということ—大きな水たまりのように見える緩水域に、いつかの強風で散らばったたくさんの落枝が降り積もっていました。嵐のあとの、痛々しいまでの違和感。それが時の経過と共に落ち着き、苔むして、まるで初めからそうであったかのようにしっくりとなじんでいくのでした。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-23 17:01
- 9月22日 鳥兜の花びら—晩夏より咲き出した先行組は早くも花を落とし始めています。トリカブトの花はなかなか複雑な構造で、落ちる際にはパーツごとにバラけます。側萼片(そくがくへん)と呼ばれるこの1枚が、あの「山高帽子」のどの部分に当たるのか、すぐに分かる人はさすがです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-22 08:58
- 9月21日 鳥兜の青い花—路傍の秋を彩る奥鳥兜(オクトリカブト)の花がどんどん咲き出しています。奥入瀬には全域にたくさんの株があり、10月いっぱいくらいまで観賞できます。花の形状を見てみると、雅楽の鳥兜が名の由来になったことがよくわかります。陽に照らされた青が素敵です。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-21 08:19
- 9月20日 渓の背—奥入瀬は歩道を下流から上流に向かうのが基本です。流れの「顔」を前方に見つつ進むことができるからです。下りは渓の後頭部を眺めて歩くことになります。とはいえ橋などでは渓流の後頭、もとい、その背もぜひ観賞してみましょう。意外な魅力を発見できるかもしれません。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-20 17:14
- 9月19日 海星と脱脂綿—黒い海星(ヒトデ)のような物体が、森の底のあちこちで目につく季節です。たいてい白い脱脂綿のようなものとセットで、拾い上げてみると、そいつが海星の中から出てきたものなのだとわかって、びっくりします。ドロノキの裂開した種子と柳絮(りゅうじょ)です。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-19 11:13
- 9月18日 山翡翠—「やまひすい」ではなく「やませみ」と読みます。大型のカワセミ類で、奥入瀬に棲んではいるものの、ごくたまにしか目にできません。それでも落葉期になると比較的出逢いの機会が増えます。川岸の草々はまだ緑のままでしたが、久しぶりにその麗しい姿を観賞できました。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-18 10:22
- 9月17日 秋茜—まだ緑のままのブナの葉ですが、縁から徐々に腐りが入ってきています。さらに枝先には、もうしっかりと冬芽の準備が。そこで秋茜(アキアカネ)が静かに翅を休めていました。8月頃から姿が目立つようになっていたアカトンボのひとつ。昨日見た茜空を思い出しました。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-17 12:47
- 9月16日 茜空—奥入瀬は大きな谷です。歩道はその谷底につけられているので、起点となる焼山を出てしまうと、あとは鬱閉した森に阻まれてしまいます。それだけに、終点の子ノ口で十和田湖に出て、ぱっと頭上で空が開けた時の解放感はなかなかのもの。この日は空が茜色に染まっていました。
- 十和田湖畔子ノ口
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-16 17:52
- 9月15日 柱状節理の岩肌—奥入瀬渓流と蔦川との合流点付近にある「立田(たつた)の滝」周辺の断崖は、柱状節理(ちゅうじょうせつり)の岩壁となっています。タテ割れの岩です。奥入瀬の谷の岩は、割目がヨコに入る板状(ばんじょう)節理が主なのです。漂う雰囲気もちょっと異なります。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-15 16:42
- 9月14日 長い花期—森では大秋の麒麟草(オオアキノキリンソウ)がまだまださかり。8月初めから咲き出しているですが、花の季節は長く、10月に入っても黄色い花びらを艶めかせます。咲いたかと思うと散ってしまう花もあるなかで、なぜこうも息長く咲き続けることができるのでしょう。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-14 16:17
- 9月13日 常磐爆—森で見かけることはほとんどありませんが、焼山の奥入瀬渓流館や蔦温泉旅館の庭などで目にする小さな花です。常磐爆(トキワハゼ)という名称は、この植物が常緑で、爆ぜるように種子が散布されるようすを表したもの。紫鷺苔(ムラサキサギゴケ)という類似種があります。
- 蔦温泉
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-13 12:55
- 9月12日 焼き菓子—埋もれた腐木から、白いきれいなきのこがいくつも顔を出していました。図鑑をひもといてみてもいまひとつ種名がはっきりしません。つやめいた白の中央部がうっすらときつね色になっていて、なんだか上品な焼き菓子を想わせます。木洩陽を受けた素敵な一枚となりました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-12 12:06
- 9月11日 きのこと蟻—ブナの幹から顔を出していた、ちぢれたヒダが特徴的なきのこ・滑鍔茸擬(ヌメリツバタケモドキ)の傘の中を下からのぞいてみました。蟻(アリ)が訪れていましたが、左側の小さな2頭はアリなのか、それともそれらしき何か別の昆虫なのかはよくわかりませんでした。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-11 11:55
- 9月10日 懸巣の羽—コケの褥(しとね)の上に落ちていた懸巣(カケス)の小さな羽。おそらく小翼羽(しょうよくう)と呼ばれる部分の一枚でしょう。青に黒の横縞模様、右の下半分は黒く、羽軸も黒い。青い部分もよく見れば上半分が青く、下方には白いグラデーションがかかっています。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-10 10:09
- 9月9日 雨鱒—渓流の浅瀬に20センチくらいの大きさの死んだ雨鱒(アメマス)が打ち上げられていました。名称である「雨」を想わせる、散りばめられた白い斑点が目立ちます。イワナ(岩魚)とよばれる「種」の亜種として位置付けられており、エゾイワナ(蝦夷岩魚)とも呼ばれています。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-09 08:55
- 9月8日 大腰赤葉蜂の幼虫—ぱっと見、毛虫のようにも見えますが「毛」は生えておらず、オレンジ色のトゲトゲが二列も連なっていて、なんだかものものしい恰好です。でも黒目がくりくりしていて、顔つきはかわいらしい。大腰赤葉蜂(オオコシアカハバチ)というハバチの一種の幼虫です。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-08 16:23
- 9月7日 枸橘苔—樹状地衣類である枸橘苔 (カラタチゴケ)が落ちていました。樹の上に生育するので<樹上>とも表現もできそう。刺の多いミカン科の低木カラタチの姿になぞらえた名称です。着生力はあまり強くないらしく、風の強い日や豪雨の後などに地上へ落花したものをよく見かけます。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-07 15:38
- 9月6日 アサダの葉と果穂—変わった名前の樹木です(語源は不明で漢字表記できません)。果穂の印象は、同じカバノキ科のサワシバに、またホップ(カラハナソウ)の毬花(きゅうか)をも連想させます。ギザギザの鋸歯の目立つ葉は、すでに晩夏を越えてだいぶ疲れが見えはじめていました。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-06 16:39
- 9月5日 大亀ノ木の実―葉のかたちが「亀の甲羅」を想わせる大亀ノ木(オオカメノキ)の実が夕陽を浴びていました。いい色です。ミズキ同様に、熟すにつれ黒く変色していきます。実を付けた枝が紅いままなのも一緒。種子を撒いてくれる鳥たちを、赤と黒のコントラストで誘うのでしょう。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-05 17:30
- 9月4日 深山鍬形―虫の季節もそろそろオフかと思いきや、深山鍬形(ミヤマクワガタ)に出逢いました。体を起こし気味にしていたので、ふだんはあまり見ることのないおなか側を観察。金色の毛が豊かで、目はバルタン星人ふう。樹液を舐める唇舌(しんぜつ)は黄色いブラシのようでした。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-04 16:19
- 9月3日 水木の果実と葉―水木(ミズキ)が実を付けていました。初めのうちは赤く、やがて黒く熟します。枝先が朱色なのも特徴です。けれど目を引いたのは果実よりも葉っぱ。秋には黄にも紅にもなりますが、夏の終わりの、このちょっとつかれた感じの緑がなんともいえず魅力的なのです。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-03 16:42
- 9月2日 釣舟草の斑—落花しているものもある一方で、まだきれいに咲いている釣舟草(ツリフネソウ)もあります。花の筒の中を覗き込んでみました。外側の色あいも個性的ですが、内部はもっと独特。この斑点模様こそ、花粉を運んでくれる虫たちを誘う秘密のサインとなっているのでしょう。
- 奥入瀬中流域
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- 2020-09-02 08:57
- 9月1日 蔓竜胆咲く—森の底で蔓竜胆(ツルリンドウ)の花がひっそりと咲いていました。地表を這っていることの多い蔓(つる)植物です。花の筒の色には個体差があって、青味の強いものもあれば、紅色味の濃いものもあります。こちらはほとんど色味をもたない、ごく清楚な白い花でした。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-09-01 16:30
- 8月31日 鳥兜の花—鳥兜の花が咲きはじめています。トリカブトとはキンポウゲ科トリカブト属の総称。奥入瀬で見られるのは奥鳥兜(オクトリカブト)と呼ばれる亜種。毒草という先入観があるせいか、どことなく不穏な雰囲気。同じ青でも、特に夕暮れ時に目にする妖しい色あいに魅かれます。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-31 18:15
- 8月30日 釣舟草落花—ぽたり、と舟形の花が落ちました。その名も釣舟草(ツリフネソウ)。なんの前ぶれもなく、唐突に。しおれても、こわれても、色あせてもいません。「まだ働けるのに、なぜ断ち落とすのだ」と花の筒が抗議しているようでした。秋への準備が加速しつつあるのでしょう。
- 奥入瀬中流域
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- 2020-08-30 18:14
- 8月29日 大姥百合の果実—森でピーマンのような緑の果実を見つけたら、それは大姥百合(オオウバユリ)のもの。なるほど野菜のようでもあるけれど、この独特の重量感ある形状は、なにか大きな昆虫の繭(まゆ)のようでもあります。種子ではなく、何かまったく別のものが生まれてきそうな。
- 奥入瀬上流域
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- 2020-08-29 18:02
- 8月28日 朽ちゆく蕗—春いちばんに花を咲かせ、大きな葉を広げていた秋田蕗(アキタブキ)。晩夏を迎え、その役目を終えようとしています。葉の縁や虫喰いの痕からじわじわひろがっていくグロテスクな黒ずみ。生あるものすべてが避けられない宿命であるがゆえに哀感をともなうのでしょう。
- 奥入瀬下流域
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- 2020-08-28 18:00
- 8月27日 鳥兜のつぼみ—秋の花を代表する鳥兜(トリカブト)のつぼみが、そこかしこでふくらみはじめています。うぶげの生えた緑色。あの鮮やかに青い花がここに格納されているとはなかなか想像しがたいところもあるのですが、じっと見ているとなんとはなしに納得できてしまうのです。
- 奥入瀬上流域
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- 2020-08-27 17:35
- 8月26日 珠蕗とががんぼ—珠蕗(タマブキ)のつぼみに、ががんぼがとまっていました。近寄ってもじっとしたまま。かくれんぼをしているようです。ふわふわと飛び、刺したり吸血したりということはなく、柄は大きいけれどいたっておとなしい、はかなげ、という言葉がぴったりの昆虫です。
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- 2020-08-26 17:22
- 8月25日 針桐の実—落ちていたのは針桐(ハリギリ)の黒い実。大木の上の方で実っていたのは知っていましたが、強風にあおられ落ちてきたのでしょうか。紅い柄に黒いあたま。いびつな感じと、唇のようなめしべのなごりが、なんとなく、ふくれっつらをした幼子のようにも見えてきます。
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- 2020-08-25 08:42
- 8月24日 大反魂草—20年ほど前から車道沿いで増えはじめた外来植物です。在来種の反魂草(ハンゴンソウ)とはあまり似ていません。駆除対象となって7年くらいでしょうか、バイパスの起点などではまだ群生しています。「憎まれ役」ですが、キク科の花らしい黄色いリボンが愛らしいです。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-24 14:40
- 8月23日 露草の青—露草(ツユクサ)もまた森の花ではなく、路傍の花です。歩道沿いの明るい場所や駐車帯となっている広場などの縁で時どき見かけます。清楚な見かけとは異なり、増えるとなると爆発的に増殖するずぶとさを秘めていますから、森ではちょいと見かける程度でよいのでしょう。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-23 13:57
- 8月22日 土木通の赤—奥入瀬の下流域に毎年、花を咲かせる土木通(ツチアケビ)があります。咲いても実にならない年もありますが、概ね実のなりはよく、結実するとたわわに垂れ下がります。アケビを想わせる形状ではありますが、その燃えるような赤は朱火と表してもいいと思えるほどです。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-22 09:51
- 8月21日 熨斗目蜻蛉—ノシメトンボが目立ちはじめました。「熨斗目」とは和服の模様のひとつ。袖や腰、裾の部分に太く色がついています。このトンボは4枚の翅(はね)の先端が褐色になっているのが特徴です。とてもよく目立ちますから、これを着物の熨斗目柄になぞらえたのでしょう。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-21 08:13
- 8月20日 貝の花—藪萩(ヤブハギ)の花は蝶形花(ちょうけいか)と呼ばれます。確かにチョウのイメージ。けれど私はこの花を見るといつも貝を想ってしまうのです。小さな真珠貝。森の底にできた明るいギャップのまわりに、淡紅色の小さな貝をあしらった草がたくさん群れていました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-20 16:12
- 8月19日 こういう森もある—カメラのズームを動かして「タカの目にしている光景」を再現したことで、ちょっと味をしめました。自分が「心の目」で感じている森を表現してみたいと思い、カメラを横振りして何枚か撮ってみたところ、意外にもイメージに沿った森の情景が写っていました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-19 15:52
- 8月18日 鷹の目線—ビシュッと空気を切り裂く音がして、目の前を一羽のタカが猛スピードで飛んでいきました。ハイタカでしょうか。一瞬で目の前を横切り、緑陰へ姿を消しました。フト、あのタカの目にしている光景はどんなものだろうかと思い、たわむれにカメラをズーミングしてみました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-18 15:38
- 8月17日 蜘蛛の宇宙—若い頃、同じ題のエッセイを書いたことがあります。30年以上経っても、やっぱり蜘蛛の巣を逆光で目にした時の印象は「宇宙」です。散策時、顔にべたりと張り付いてくる粘った糸は本当にイヤなものですが、この小さな銀河のような芸術作品の前では帳消しとなります。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-17 16:20
- 8月16日 いそしぎ―春に渡ってきて、礫の多い中洲でさかんに鳴いていたのに、ヤマセを迎える頃にはすっかり沈静。いるのかいないのかすらわからなくなっておりましたが、この日ひょっこりと姿を見せました。今年もそろそろ奥入瀬とお別れかな。そんなことを考えているような横顔でした。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-16 17:40
- 8月15日 夏の渓―お盆を迎える頃になれば、どことなく涼やかさの漂いはじめていた渓流も、近年ではけっこうな暑さが続くこともあります。この日も、午前10時を過ぎると蒸しはじめ、たたずんでいるだけでも疲労感が。強い陽ざしを浴びてきらきら輝く冷たそうな水流だけが涼感を誘います。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-15 10:49
- 8月14日 泡の巣―地面に近いところで見つけた小さなあぶく。その名も泡吹虫(アワフキムシ)の幼虫がひそむ「泡の巣」です。丈夫で断熱効果の高いこの泡は、幼虫が自分のおしっこに有機物を溶かし込み、そこへ空気を吹き込んで泡立てたもの。夏になると森の底のあちこちで目にします。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-14 10:36
- 8月13日 猛る茸―コレふつうのキノコじゃない、と一目でそう思いました。タケリタケと呼ばれるものでしょう。テングタケ属など傘のある一般的なキノコにヒポミケス属の菌類が寄生することで、あたかも「男根が猛(たけ)っているような」形状に変化したものです。不気味だけど、面白い。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-13 16:27
- 8月12日 夏の森のひかり―実は夏の森はあまり好きではありません。鬱蒼と繁った葉や草のあいまに立ち込めている、むっとしたような、おもおもしいような、けだるいような、そうした感じが苦手なのです。夏の森のぽってりとしたひかりには、いつもアンニュイな印象があります。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-12 10:14
- 8月11日 聖の光芒―銚子大滝の午後。舞い上がる水霧が、いく本もの光の筋となります。とても厳(おごそ)かで清廉(せいれん)な、聖なるものを前にしているような、自然と襟(えり)をただされるような、そんな敬虔な気持ちとなります。まさに聖(ひじり)の光芒(こうぼう)なのです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-11 15:17
- 8月10日 大滝―奥入瀬の本流にかかる唯一の滝・銚子大滝。落差7メートル、幅20メートルの岩壁を、十和田湖から流れ出した水が白い飛沫をあげて豪快に落下していきます。たっぷりとした豊かな水量、奔放なうねり。午後の斜光のスポットライトで目にするたび、心が静もっていくのです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-10 15:17
- 8月9日 熟す前―こちらは舞鶴草(マイヅルソウ)の熟す前の果実。花が落ち、実が現れますが、初めのうちは緑色の珠です。それが日を追うごとに、だんだんと朱色の部分が目立ってきて、まだら模様となります。やがて完熟すると見事なまでに赤い、真紅のルビーのような果実となるのです。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-09 12:38
- 8月8日 森の花火―大型のセリ科の花が満開になると、森の底で打ち上げられた小さな花火のよう。木洩陽を浴びて輝くさまが毎夏の楽しみです。エゾニュウは、特に立派な華となります。セリ科の花は見分けが難しく、これって本当にエゾニュウなのかと首を傾げたくもなる点はさておいて。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-08 13:58
- 8月7日 秋の麒麟草―暦の上ではまだお盆も迎えていませんが、路傍には秋の麒麟草(アキノキリンソウ)が咲きはじめています。正確にはオオアキノキリンソウという種類。図鑑を見てもなんだか違いがよくわかりませんけれど、まあそれはそれ、今季もまた楚々とした黄色いブーケの登場です。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-07 12:53
- 8月6日 川床の彩―涼し気な渓流の水面。光の移動でいろいろに変化していきます。そのデザインの妙たるや。水深の浅いところでは、川床(かしょう)の岩盤の色が透けて見え、いっそアーティステックな光景となります。光を受けた川底の黄土色が、流れに不思議な彩りを添えてくれるのです。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-06 10:41
- 8月5日 気根―ツルアジサイの蔓(つる)から気根が伸びていました。これで空中湿度を取り込み、また樹の幹に張り付いて登っていくのです。まだ伸びたての若い茎のせいか、ちょと頼りない感じもしました。この夏、きっとぐんぐん生長し、見違えるような姿となるのでしょう。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-05 10:35
- 8月4日 粘菌見っけ―遊歩道沿いの、いつもの朽木。ちょいと陰になっているところをそっとのぞきこんだら、いたいた。キノコっぽいけど、キノコじゃない。枝分かれした、白いからだ。粘菌とか変形菌とかと呼ばれる生きもの。ツノホコリのなかま。あちこちで目にする、おなじみさん。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-04 11:49
- 8月3日 きのこのぬめり―朽ちた倒木に現れたナメコの群れ。長く続いているヤマセの霧雨を受け続け、腐木はすっかり黒ずんでいます。そこに居並ぶナメコたちの「ぬめり」も、いまや絶好調。ほの暗い森の微光を受け、存在感たっぷりのぬめぬめぶり。すっかり見とれてしまいました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-03 14:33
- 8月2日 小さな枝葉―霧にけぶる森で、ツルアジサイをたすきのようにまとったトチノキの大木を見上げていたら、太く大きな幹から小さな枝葉が顔を出しているのに気づきました。広がる樹冠の枝葉にさえぎられ、なかなか光を受けられない場所なのに、ちょっと頼もしい感じがしました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-02 11:35
- 8月1日 ヤマセの森―深い谷である奥入瀬より、なぜか南八甲田東麓の蔦の森の方がよく霧がかかります。しかし蘚苔類をはじめとする着生植物は奥入瀬の方が豊富。このあたりの「事情」はよくわかりませんが、乳白色の濃霧に満ちたヤマセの森は、今日も幻想的な表情で来るものを包みます。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-08-01 11:10
- 7月31日 臭木の花―葉を揉むと独特の臭気がするので臭木(クサギ)。陵のある紅紫色の萼(がく)から飛び出すようにして開く白い花と、そこから突き出す長い雄しべ。なかなかの風情です。花には芳香があります。なにかもっと詩情のある名称はなかったのかと、夏が来るたび思います。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-31 15:07
- 7月30日 滑座頭虫―この日、笹の葉の上に現れたのは滑座頭虫(スベザトウムシ)と呼ばれるザトウムシの1種。「スベ」とは、体がすべすべしている、という意味なのでしょうが、実は「滑」には「ナメラ」の意もありますから<ナメラザトウムシ>の方がよかったような気もします。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-30 14:22
- 7月29日 巨蔓―ツルアジサイの巨(おお)きな蔓(つる)。しかしもはや幹というべき太さです。いったい何年ものなのでしょう。そのうねりぐあい、皮の剥がれぐあい、濡れた飴(あめ)色の照りぐあい、小さなでこぼこの盛り上がりぐあいが、すべて歳月に養われた風格をまとっています。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-29 11:00
- 7月28日 痂状地衣のオブジェ―トリハダゴケ(鳥肌木毛)の1種かと思われる地衣類が、雨上がりの木洩陽をスポットライトのように受けていました。なんともいえない不気味な存在感がありました。じっと眺めていると、だんだん人の顔のようにも、前衛的なオブジェのようにも見えてきます。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-28 14:48
- 7月27日 齧った痕―白いキノコが何かに齧(かじ)られていました。初めはてっきりノネズミなどの小動物かと思っていたら、なんと食したヌシは大きなヤマナメクジでした。口があるのかないのかわからないような軟体動物のくせに、なかなか荒々しい齧り痕(あと)だと感心させられました。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-27 13:54
- 7月26日 這い跡―森に棲む大きな蛞蝓(なめくじ)であるヤマナメクジは、落葉のたまった薄暗い森の底を、いつもゆったりと這い廻っています。彼らが通ったあとにはぬめぬめした痕跡が残り、やがてぱりぱりに固まります。それが森の微光を受けると、蒼白い幻想的な輝きを見せるのです。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-26 13:51
- 7月25日 藪萩―清楚な薄桃色をした小さな花が咲きはじめました。よくよく見ないと、その愛らしさが「発見」されにくい、そんな花です。林縁や路傍を代表する草で、純粋な「森の花」ではありません。奥入瀬でこの花がたくさん見られるのは、国道と遊歩道の存在ゆえのことでしょう。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-25 13:39
- 7月24日 赤麻―「赤い麻」と書いてアカソと読みます。茎が赤味を帯びています。縄文時代から、この草の繊維は衣服や縄などの材として重宝されてきたそうです。いたるところに群生していますから、確かにこれだけあれば服作りにもこと欠かないでしょう。亀の尾を想わせる独特の形状です。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-24 12:09
- 7月23日 糊空木―ノリウツギの白は夏の色。この花が咲くと、ヤマセ続きの肌寒い日であっても「夏が来た」と思います。紫陽花(あじさい)の仲間ですので、立派な飾り花と、小花がたくさん集まった両性花があります。花の集まりがソフトクリームのようにこんもり盛り上がるのが特徴です。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-23 10:41
- 7月22日 羊歯のソーラス―多くのシダは、その裂片の裏側のひとつひとつに、胞子を格納したソーラス(胞子嚢=ほうしのう)を並べて付けます。黒く熟したそれは、まるで昆虫の卵のようにも見えます。おお、旺盛に実っとるなあ、と思う反面、ざわっとするような感じもあります。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-22 13:17
- 7月21日 陸貝の銀箔―ヤマセの森の底の微弱な光を受け、まるで銀箔(ぎんぱく)をほどこしたような陸貝のぬけがらを見つけました。きっと「なんとかマイマイ」といった、ちゃんとした名称があるのでしょう。ご存知カタツムリ以外にも、実は森にはいろいろな陸生貝類が暮らしているのです。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-21 15:16
- 7月20日 大姥百合―奥入瀬の夏の路傍の花で、もっとも大柄な野草といえば、こちら大姥百合(オオウバユリ)でしょう。ラッパのような筒型の花を、上下にいくつも並べた立姿。夏のさかりにふさわしい存在感です。よく見ると、足長おじさんのような座頭虫が花筒の上で憩っていました。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-20 15:14
- 7月19日 夏の流れ―すっかり繁茂しきった森の窓から目にした、夏の流れ。つめたそうな水。白い泡沫。でも、不思議と飛び込んでみたいとは思わない光景。木々の間から、静かに眺めるだけにとどめておきたい眺め。人を寄せ付けない、というのとはちょっとちがう、そっとしておきたい風景。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-19 11:29
- 7月18日 苔の花―緑の苔(こけ)に、かような「紅い花」が咲くことを、ずっと知らないままでした。しかも頬寄せあってさかんにおしゃべりしています。隠花植物と呼ばれるものたちの魅力にもし目覚めることがなかったら、きっとかなりもったいない人生を送っていたような気がします。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-18 14:42
- 7月17日 散り落ちた花びら―1枚の蝦夷紫陽花(エゾアジサイ)の葉の上に散らばっていた、こめつぶみたいな小さな花びらと細い花糸(かし)。同じ株の両性花の花びらなのでしょうか。こんなに早く散ってしまうのかと、しばし絶句。ついこの前、咲きはじめたばかりだと思っていたのに。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-17 08:47
- 7月16日 樹洞―どういうわけか夏になると、こういう絵柄の写真をつい撮ってしまうのです。熊が棲んでいそうな樹洞がコワいというだけでなく、周囲の雰囲気も『ブレア・ウィッチ』みたい。薄暮の森は不気味です。なんだか、もはや熊じゃないものまでがそこらじゅうに潜んでいそうです。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-16 18:35
- 7月15日 煙管貝―その「腐生菌に頼って生きる花」は半ば地中に埋もれた腐り朽ちた木のすぐそばに咲き、そしてそのかたわらに、木片に吸い付く煙管貝(キセルガイ)がいました。腐りかけた木片に着生した藻の仲間を食しているのでしょう。死して腐るもの、それに依存して生きるもの。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-15 08:24
- 7月14日 こなすび―遊歩道沿いに咲いていた黄色い花。こなすび、と言われれば、花のかたちが、どことなく「なすびの花」に似ているような。でも、なすびことナスはナス科の植物。こちらはサクラソウの仲間なんだそうで。しかも実の形状になぞらえたとか。めんどいなあ。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-14 08:16
- 7月13日 水底―渓流の浅瀬の水底(みなぞこ)に敷き詰められた礫(れき)が織りなす芸術(アート)には、いつも嘆息させられます。ゆらゆらとたゆたう水面に現れる硝子細工のような紋様。光のうつろいや明暗によって、多彩に変化していきます。いつまでも見ていて飽くことがありません。
- 奥入瀬上流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-13 08:07
- 7月12日 夏の森の天井―鬱蒼とした厚い緑葉がシールドとなっている夏の森の天井は、強烈な陽射しを吸い込んでしまいます。光がなかなか届かない森の底は、ゆえにいつも薄暗く、太陽の移動に応じてゆっくりと位置を変えていく木洩陽のスポットライトがところどころに差し込まれるだけです。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-12 07:57
- 7月11日 蝦夷紫陽花―こちらは「本丸」である両性花の花がかなり開きはじめた株。ひょろりと伸びた雄しべの花糸(かし)が、わいわいと愛らしいにぎやかさを演出しています。装飾花の淡い水色には個体差があります。この株では、そのなんともいえぬ清楚さに目を奪われてしまいました。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-11 07:42
- 7月10日 蝦夷紫陽花ーエゾアジサイの花のつぼみ。「本丸」である両性花が、まだその身を固く閉じたままなのに、デコレーションたる「装飾花」の方はもうとっくに開いていて、その存在を果敢にアピールしています。準備万端。いえ、それともちょっと先走ってしまったという感じでしょうか。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-10 14:26
- 7月9日 梅笠草―梅に似た花を笠のように下向きに咲かせる草、からの名称ですが、そっと茎をつまんでみると、アレ硬い。草にあらず、なんと小さな「木」であることがわかります。雰囲気もなかなかのもの。森の底の暗がりで、なんだかエクトプラズムでも吐いているかのような妖しさです。
- 奥入瀬下流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-09 10:27
- 7月8日 霧の森―ヤマセの濃霧が満ちてくると、森の雰囲気があまやかなものになっていきます。たたずんでいると、からだがじわっと湿ってくるのがわかります。不快なはずなのにそうでもないのは、やはりこの幻想的としかいいようのない、森がまどろんでいるかのような光景のせいでしょう。
- 蔦の森
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-08 09:10
- 7月7日 分流―本流の奔流から分かれ、森の底を縫うように流れていく小川。本流にはない独特のおもむきがあります。でも、常なる流れであるとは限りません。増水の生じた年や大きな倒木が流路をさまたげてしまった年などにいつのまにか現れ、またいつのまにか消えていることもあります。
- 奥入瀬上流域
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- 2020-07-07 08:52
- 7月6日 座頭虫―彼の名は座頭虫(ザトウムシ)。あずきみたいな、まるいからだ。ひょろりと細長い8本の歩脚。うち、感覚器の働きをする第2脚を、あたかも盲人が杖をつくように前方でとんとんと動かしながら歩くゆえの名称です。ひょこひょこと森の底を闊歩する姿は、とてもユーモラス。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-06 10:56
- 7月5日 鬼下野の花火―下野草(シモツケソウ)の花は赤いのに、鬼下野(オニシモツケ)の花は白。小さな花がひしめきあい、泡立つようにもりあがって、それはまるで小さな線香花火のよう。暗い暗い夏の森の底で、静かな白い灯をいくつもたいて、ひっそりと昆虫たちをいざなっています。
- 奥入瀬中流域
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- 2020-07-05 10:46
- 7月4日 雨やどり―ヤマセ(太平洋から侵入する雨霧)に包まれ、しっぽりと濡れそぼった森。樹の根元に坐ってフト上を見たら、葉っぱの裏で雨宿りをしている尺取虫(シャクトリムシ)が。鈍色(にびいろ)のかぼそい光のもと、「さてこれからどうしよう」と思案に暮れているようでした。
- 蔦の森
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- 2020-07-04 09:14
- 7月3日 沢胡桃の短冊―この夏もまた沢胡桃(サワグルミ)が実をたわわにぶらさげていました。まだ熟していない、緑色の果実。一本の軸にいくつもの種子が実ります。そよそよと風にゆれるさまは「蝶飾り」を付けた短冊のよう。ういういしくて、みずみずしい、さわやかな夏のきみどりいろ。
- 奥入瀬下流域
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- 2020-07-03 07:53
- 7月2日 ぷよぷよ―幹から顔を出していたキクラゲの仲間を見つけました。さわると、ぷよぷよ。きのこ図鑑をひもといてみると、どうやらヒメキクラゲ科のサカヅキクラゲと呼ばれる種ではないかとアタリをつけました。サカズキとは生長の段階で形状が変化し、一時盃状になるゆえとのこと。
- 奥入瀬中流域
- ©河井 大輔 Daisuke Kawai
- 2020-07-02 15:51
- 7月1日 トチノキの若木―「森の底」と呼びたくなる、薄暗い林下ですくすく生長するトチノキの若木たち。いま何年生なのでしょう。ところどころ虫に喰われつつも旺盛に育っています。霧雨に濡れ、しとやかな輝きを見せています。雨の森の、この「照り」ぐあいがたいそう魅力的なのです。
- 奥入瀬下流域
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- 2020-07-01 09:27