エコツーリズム講座 奥入瀬フィールドミュージアム・コラム

エコツーリズム講座

観光とは,読んで字のごとく「光を観る」行為です。「光」とは,その土地の魅力であり,特質であり,そして輝きです。
「見る」ではなく「観る」という字があてられているのも,対象をただ眺めるだけではなく,「観察する」という能動性を表しているためです。
これまで奥入瀬渓流や十和田湖が「売り」としてきたものは「景観の美しさ」でした。しかし優れた景色を誇る渓流や湖ならば,他所にもたくさんあります。
自然が素晴らしいのは,全国どこの観光地でも同じです。単に「眺めがきれい」というだけでは,その土地の特長をアピールすることにはなりません。
「景観美を讃えるだけ」だった従来の観光誘致から、地域の自然の「質」を語るプロモーションへの転換をはかること。奥入瀬・十和田湖観光に関わる誰もが,この地の「どこが」「どのように」魅力的なのかを,きちんと具体的にプレゼンテーションできるようになることを目標とするべきはないでしょうか。
この講座では,奥入瀬の新たな観光モデルを,渓流遊歩道そのものを天然の野外博物館とみなす「フィールドミュージアム構想」として提案し,奥入瀬におけるエコツーリズムの将来ビジョンとその課題について考えていきたいと思います。
「見流す」だけの観光地から,「観る」を味わう観光地へ。

エコツーリズム講座 講座一覧

2021・03・15

#28 なぜ奥入瀬で山菜やきのこを採ったらだめなのか (その3)

利己的な利活用の範疇にのみとどまらない自然の魅力と価値というものについて、その理解を浸透させていくための活動を、地域的規模で継続していくこと。ばかばかしいと思いながらも、それでもとにかく対話の努力を続けていくこと。問題を解決する糸口は、そういうところにしかないような気がします。地域の民意を高めていくしか、結局のところ方法はないのです。
2021・03・08

#27 なぜ奥入瀬で山菜やきのこを採ったらだめなのか (その2)

山菜きのこシーズンを迎えると、少なからぬ人たちが奥入瀬へ「収奪」にやってきます。車を停めたすぐ横で手軽に採取することができる容易さが魅力なのでしょう。しかし奥入瀬は自然公園法により国立公園の特別保護地区に指定され、また文化財保護法によって「特別名勝及び天然記念物」に指定されている地域です。植物の採取が明確に禁じられている地域なのです。
2021・03・01

#26 なぜ奥入瀬で山菜やきのこを採ったらだめなのか (その1)

遊歩道沿いにマイタケが出ていました。天然ものを間近に観察できるチャンスはとてもレアです。出逢いの感動もさることながら、森と菌根菌のつながりなど多くのことを学べる、まさに野外博物館にふさわしい「展示物」でした。ところがわずか数日のうちにすべて盗奪されてしまいました。国立公園の特別保護地区で、いったいなぜこのようなことが起きるのでしょう。
2020・11・26

#25 フィールドミュージアム構想実現のために(4の3)

奥入瀬の自然からインスピレーションを得て製作された美術作品が、その地域の美術館に常設展示されているということは、奥入瀬のプロモーション効果としても、非常に意義深いものとなるでしょう。フィールドミュージアムと美術館とがストーリー性をもって「連携」すれば、他の地域に類を見ない画期的な表現活動が可能となるはずです。
2020・10・28

#24 フィールドミュージアム構想実現のために(4の2)

奥入瀬をフィールドミュージアムのエントランス施設となるミュージアムセンターは、奥入瀬の自然の価値や保護の重要性、その活用や展開について、地域住民および来訪者の理解を得るため、各種「講座」や「観察会」を実施したり、ワークショップや研修講師を招聘した講演会、各種フォーラムやシンポジウムの開催会場としても機能させることが可能です。
2020・09・30

#23 フィールドミュージアム構想実現のために(4の1)

奥入瀬をフィールドミュージアムとして位置づけ、その将来性・発展性を考える時、そこには博物館機能とガイディング機能を併せ持ったエントランス施設であるミュージアムセンターが必要となるでしょう。ビジターは、まずそこで奥入瀬のエッセンスを散策前に予習し、散策後には「復習」を楽しむのです。「学びの旅」としてのエコツーリズムにふさわしい施設です。
2020・08・22

#22 フィールドミュージアム構想実現のために(3の2)

ネイチャーガイドは単なる案内人や解説者にとどまらず、エデュケーターやキュレーターとしての能力も求められます。自然科学から地域の歴史や民俗学までをカバーする幅広い知見と、その編集・伝達技術を身につけなければなりません。そのようなガイドを育成するためには、現地でよく整理・検討されたプログラム(マニュアル)の作成が必要となるでしょう。
2020・07・31

#21 フィールドミュージアム構想実現のために(3の1)

エコツーリズムを推進していくために不可欠なのは、現地調査に基づいた幅広い知見を有し、それを適切に伝えられる案内能力を持ったネイチャーガイドの存在と、その育成システムです。ネイチャーガイドの役割は、自然環境と人間社会との「橋渡し」をすること。優れたガイドにはエデュケーターおよびキュレーターとしての能力が求められます。
2020・03・20

#20 フィールドミュージアム構想実現のために(2の2)

奥入瀬の自然についての総合的な解説書が存在しなかったということは、この地域のエコツーリズムの推進をはばむ憂慮すべき問題でした。それは公園利用者に自然情報を提供できないということ以前に、奥入瀬がどのような魅力と価値を有する場所で、どのように楽しむべき場所なのかという明確な指針の欠如でした。

ナチュラリスト講座

奥入瀬の自然の「しくみ」と「なりたち」を,さまざまなエピソードで解説する『ナチュラリスト講座』

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奥入瀬を「天然の野外博物館」と見る,新しい観光スタイルについて考える『エコツーリズム講座』

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