ナチュラリスト講座 奥入瀬フィールドミュージアム・コラム

ナチュラリスト講座

奥入瀬は,勾配ゆるやかにして純度の高い自然を満喫できる,まさに天然の野外博物館。
ここでは、登る・走る・ウォーキングするといった,一般的なアウトドア・アクティビティとは一線を画した 「あるく・たたずむ・うずくまる」が基本スタイル。
立ちどまるからこそ見えてくる,森羅万象のかずかず。
足もとのコケから頭上の鳥たちまで,奥入瀬の「作品」をゆっくり・じっくり・たっぷりと楽しみましょう。
自然のことについてはあんまり詳しくないけれど,できればもっと深く楽しむためのアドバイスがほしい。
ただ見流すだけではない,ちょっとした「自然の見方」を身につけるためのヒントが,もう少しほしい。そんなあなたのためのコラムです。
奥入瀬の自然の「しくみ」と「なりたち」を,いろいろなエピソードを通し,わかりやすく紹介していきます。

ナチュラリスト講座 講座一覧

2026・02・16

#104 コケのはなし(その8)

奈良時代末期に成立したとみられる日本最古の和歌集『万葉集』。ここにはコケの詠われた作品がいくつか見られます。ここに上げた十首のうち、コケに「蘿」を当てたものが八首。残りは「薜」と「苔」が一首ずつ。どうやら、この時代にはコケといえば「苔」ではなく「蘿」と表記するのがふつうだったようす。使い分けがあったのかどうかはともかく、まずはいにしえびとがどのようにコケを詠ったか、この機会にぜひ鑑賞してみましょう。
2026・01・30

#103 コケのはなし(その7)

これまで「コケ植物の胞子体は枝分かれしない」というのが「定説」でした。しかし枝分かれ「できない」のではなく、あえて「しない」ことを進化の過程で選択したという説があります。胞子体の枝分かれを、何らかの理由により遺伝子によって抑制しているというものです。陸上植物の祖先である「維管束を持たず枝分かれはしていた胞子体」が、さらに枝分かれすることもやめてシンプルな胞子体に戻った(=退行進化した)ということです。
2025・12・29

#102 コケのはなし(その6)

コケはとても小さな生きものです。観察するには拡大することが必要です。ただその場合、そのコケが生えているところまでできるだけ視点を落とし、「コケ目線」で道路や森、渓流などの風景を見てみるといっそう面白いです。そのコケの生育環境を実感できます。単に対象となる生きものだけを見るだけではなく「どんな場所でどんなふうに生きているのか」という視点を持つと、相手の好きな場所や生き方などが、だんだん見えてくると思います。
2025・11・27

#101 コケのはなし(その5)

奥入瀬のコケの代表種を上げると➊アオモリサナダゴケ❷エゾヒラゴケ❸オオギボウシゴケモドキ➍オオシッポゴケ➎オオバチョウチンゴケ❻コツボゴケ❼ネズミノオゴケ❽ジャゴケ❾コフサゴケ❿ミヤマリュウビゴケ⓫トヤマシノブゴケ⓬ホンシノブゴケ⓭エビゴケ⓮オオトラノオゴケ⓯クサゴケといったところでしょうか。これらの特徴的な、しかもかなりわかりやすいものから覚えておけば、奥入瀬のコケたちとぐんと親しくなれることでしょう。
2025・10・28

#100 コケのはなし(その4)

コケには3つの見方があります。集団(全体)・個体・細胞(組織)です。野外観察ではまず集団レベルでの観賞となります。「あ~コケの緑が奇麗だなあ」というアプローチです。この時、コケのひとつひとつを観察しているのではなく、全体レベルで眺めています。それでも、目が慣れてくると色とか艶とか状態など、だんだんと違いが見えてくるようになってきます。これが最初の段階です。「苔庭観賞レベル」といってもいいかもしれません。
2025・09・30

#99 コケのはなし(その3)

コケはそれぞれ種類ごとに、ちゃんと名札代わりの特徴を持っています。そこに目を向けていくというのが「コケとつきあう」ということです。地道にコケとつきあっていけば、だんだん「コケを観る目」が養われます。すると「自然を観る目」も変わってきます。小さな存在を通して、大きな自然のこともまたよく観えてくる。「広い視点」に立って自然を理解することができるようになってくると、楽しさはますます深まっていきます。
2025・08・27

#98 コケのはなし(その2)

コケは乾燥時、水が内部から出ていくことを、あえて防ごうとしません。つまり、抗わない。どんどん水が出ていくのに任せてしまいます。その代わりに、仮死状態となることにしました。自ら生命活動を中止してしまい、そのまま休眠しちゃう。そういう独自の生命維持方法をあみだしたわけです。乾燥から身を「守る」のではなく、乾燥に身を「任せる」。そういう方向に進化していったわけです。
2025・07・26

#97 コケのはなし(その1)

植物の形状と繁殖の関係は、とても面白いです。「いったい、なんだってこういう形になってるんだろう?」と、じっくり考える機会、あれこれ想像する愉しみを与えてくれます。あれこれ考えてみることは、とても大切です。それが面白ければ、楽しければ、なおのこといい。小さな生きものを前に、あれこれと思いめぐらせる。せわしない現代人にとって、最も必要なことかもしれません。
2025・03・28

#96 イナコスの娘は春のほとりで舞い踊る

日本のクジャクチョウの学名は「イナキス」属の「イオ」という種の亜種「ゲイシャ」です。イナキス・イオという種名にはどういう意味があるのでしょう。クジャクチョウは、実は英名でもクジャクチョウと呼ばれます。やはりクジャクに関係があるのでしょうか? しかしこの属名イナキスはもともとギリシア神話に登場する王イナコスに由来するもの。そして種名のイオとは、その娘の名前なのです。

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奥入瀬の自然の「しくみ」と「なりたち」を,さまざまなエピソードで解説する『ナチュラリスト講座』

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